はじめに
スマホゲーム「魔法使いの約束」に登場するキャラクター達は、有名文学作品をモチーフとして、性格や立場が形作られています。今回は西の魔法使い、ラスティカとクロエについて考察していきます。二人の考察は今回で2回目。前回に引き続き、「幸福な王子」をベースに考察していきたいと思います。
前回の考察で「幸福な王子」のあらすじや、ラスティカの名前の由来について考察していますので、そちらから読むことをお勧めします。
はじめにスマホゲーム「魔法使いの約束」に登場するキャラクターは、有名文学作品をモチーフにして形作られています。今回は西の魔法使い、ラスティカとクロエを考察していきます。ふたりの主なモチーフとなっているのは「幸福な王子」と「日々の泡」とい[…]
それではレッツゴー♪
ああ、そのツヤツヤとした麗しい肌…きみは僕の花嫁だね。さあ、この鳥籠にお入り。
それカエルだから!ツヤツヤしてるのは粘膜だから!あああ…
ラスティカとクロエの外見
ラスティカとクロエの服装と瞳の色は、「幸福な王子」をモチーフにしていると思われます。外見の考察をしていきますが、由来がハッキリしているものもあれば、ちょっと根拠に乏しい部分もありますので、ふんわりお楽しみいただけると幸いです。
ラスティカの外見
ラスティカは「幸福な王子」に登場する王子像をモチーフにしています。王子の両目はサファイヤ、剣の柄はルビー、身体は黄金でしたが、自身の宝石や純金を貧困に困っている人に配ってしまったため、最期には鉛の灰色になってしまいました。そして、物語の終わりには雪が降っていたため、身体には雪が積もっていたと推測できます。
では、ラスティカの外見をみてみましょう。
ラスティカの両目は深い青色。これは王子の両目のサファイヤをモチーフにしているのでしょう。ラスティカは剣を持っていませんのでルビーは見当たりませんが、インナーが深い赤色ですね。真っ白なアウターと、アクセントにあしらわれている金色は、王子の最期、わずかに残った純金と、雪が降り積もっている姿をモチーフにしているのかもしれません。
ちなみに、身分の高そう(?)な魔法使いたち、例えばオズやアーサー、スノウホワイト(ヒースクリフも?)はピンブローチをつけており、ラスティカも同様にピンブローチをつけています。ピンブローチの由来がまだ調べきれていないので、なぜそのキャラクター達が身に着けているのかなど、法則性を引き続き考察していこうと思います。
そして、ラスティカの胸に輝く薔薇の装飾が施されたロケット。このロケットの中身は未だ作中では語られていません。薔薇はラスティカのもう一つのモチーフである小説、「日々の泡」を由来としていると思われますので、また別の記事でご紹介しますね。髪型、髪色も同様に別記事にて。
クロエの外見
クロエは「幸福な王子」に登場するツバメをモチーフにしています。「幸福な王子」では特にツバメの外見について語られてはいませんので、世間一般的なツバメだったのでしょう。(ツバメにも色々と種類がありますがここは割愛。)
ところで、みなさんはツバメをじっくり見たことがありますか?どういったカラーリングなのかみてみましょう。
写真提供:Swallows | Clifford Hill Northampton 19 May 2015 | Nicholls of the Yard | Flickr
頭から尻尾にかけて青→黒に変化していき、くちばしの周りは赤、胸元は白っぽいクリーム色です。つまり、カラーリングとしては、黒、赤、クリーム、青色。では、クロエの服装はどうでしょう。
服のカラーリングはトップスが黒、赤、クリーム色。パンツは濃い目の暗い青紫。ツバメのカラーリングに似ていると言えなくもないような、言えないような笑。
そして、胸元には羽と薔薇のデザインのブローチを挿しています。この羽は「幸福な王子」のツバメから、薔薇はラスティカと同じく「日々の泡」から由来がきているのでしょう。
また、瞳の色はすみれ色。はっきりとした由来かわかりませんが、「幸福な王子」にこんなエピソードがあります。ツバメは王子に頼まれて、サファイアを劇作家の若者のところに運びました。その際に、部屋の傍らにある枯れたすみれの上にサファイアを置いたのです。
サファイアは王子の瞳。サファイアと重なり、光に透かしてみるとすみれ色の瞳に見えたかもしれませんね。
「幸福な王子」に関連するまほやくエピソード
まほやくには「幸福な王子」をオマージュしたエピソードがいくつかあります。ここではそのエピソード達をみていきましょう。
欲望と祝祭のプレリュード
西の祝祭のイベントストーリー、「欲望と祝祭のプレリュード」に登場する家無し魔女。彼女は「幸福な王子」に登場するマッチ売りの少女をモチーフにしています。
「幸福な王子」のマッチ売りの少女
少女はマッチを売っていましたが、溝に全て落としてしまい、売れるマッチがなくなってしまいました。少女がお金を持って帰れなかったら、父親が少女をぶつだろうと王子は言います。王子は自分のサファイアを少女に持っていくようツバメに頼みます。ツバメは王子の目が無くなってしまうことを嫌がりましたが、王子が切に願うため、少女にサファイアを運びました。少女は喜び、笑いながら走って家に帰っていったのでした。
まほやくの家無し魔女
カジノに潜入した賢者たちは、一人の魔女を見つけます。クロエは泡の町で彼女を見かけていたため知っていました。彼女は周りから「家無し魔女」と呼ばれ、家から追い出されて路上で眠りながら、指先から出した炎で自分を温めていたのです。


クロエとラスティカは、彼女が幸せになれるよう願いを叶えようとします。彼女は願いました。「誰のためでもない、自分が楽しめる歌を歌いたい。」その願いをきくと、ラスティカはピアノを奏で、クロエはドレスを用意しました。軽快な伴奏と共に歌う彼女のもとに、素敵な音楽を聴こうと人が集まります。そして音楽が終わったあと、そこには嬉しそうな魔女の姿があったのでした。
「幸福な王子」では、マッチ売りの少女を王子とツバメが助けました。それと同じように、まほやくでは家無し魔女をラスティカとクロエが助けたのです。原案をオマージュした、心温まるエピソードでした。
悲しそうな顔をする王子とラスティカ
「幸福な王子」の王子は、ツバメが王子の頼みを断って旅たとうとすると、とても悲しい顔をしました。それをみたツバメは良心を打たれ、王子の頼みをきくことにしたのです。これに似たエピソードがまほやくでも描かれています。
クロエキャラクターエピソード ラスティカの気持ち
クロエと世間話をしていた賢者。クロエに「いつか自分の店をもつのか?」ときくと、クロエは「いつか持ちたいけれど、ラスティカとお別れしなきゃいけないから、まだ先でいい」と答えます。
そして、前に旅の劇団から衣装係になってくれとオファーを受けた事があると話しました。その時、劇団の人がラスティカとを見て吹き出したそう。「お兄さんにそんな顔をされちゃあ、この子を劇団に貰うわけにはいかないね」と。クロエは実際にラスティカの表情をみれませんでしたから、どんな顔をしていたかはわかりません。


怒るか悲しむかしていたと思いますが、ラスティカの性格上、とても悲痛な表情をしていたのかもしれませんね。表情一つで友人を引き留めるところが、「幸福な王子」と似ているエピソードでした。
「青い鳥」との関係は?
メーテルリンク作の童話劇「青い鳥」。チルチルとミチルという兄妹が青い鳥を探して様々な世界を旅するファンタジー童話劇です。この「青い鳥」は南の魔法使いルチルとミチルのモチーフとなった作品です。作品のあらすじや、まほやくでオマージュされたエピソードなどは下の記事を参考にして下さい。
【まほやく 元ネタ考察】ルチル×青い鳥 あらすじ編│まほやく考察部
ところで、青い鳥を捕まえると幸せになれる、というジンクスを聞いたことはありませんか?このジンクスは童話「青い鳥」を由来としていると言われています。
たびたびラスティカとクロエのエピソードにも青い鳥がでてきますね。例えば、メインエピソードでクロエが友人に送ったスカーフに青い鳥が刺繍されていたり、など。では、童話「青い鳥」とラスティカとクロエは何か関係があるのでしょうか?
「青い鳥」にラスティカとクロエは出てくる?
実際に「青い鳥」を読んでみた感想ですが、ラスティカとクロエらしい人物は出てこなかったように感じます。確かに鳥籠をもって世界各地を訪れる二人ですが、その他はラスティカとの関係は感じられませんでした。また、童話にでてくる青い鳥の種類ですが、作中では言及されていません。説としてはハトやツバメなど言われているようですが、ハッキリとはしません。そのため、「幸福な王子」のツバメをモチーフにしているクロエとの関係も薄そうですね。
そもそも、青い鳥自体が珍しく、めったに見つからないため、チルチルとミチルが鳥を探す旅に出たのです。そのため、鳥の種類がはっきりとしていないのは、何か特別で神秘的な鳥であることを強調するためでもあるのでしょう。作者のメーテルリンクも特に種類は決めずに書いていたのかもしれません。
「幸せ」をテーマにした作品
では、なぜラスティカとクロエのエピソードに青い鳥が関わってくるのか?それはラスティカとクロエのエピソードが「幸せ」をテーマにしていることが多いためです。
ふたりのモチーフになっている「幸福な王子」では、タイトル通り「幸福」がひとつのテーマとして描かれています。お金があれば幸せなのか?そう思っているから富裕層が肥大し、貧困層が苦しむのではないか?そういった問題提起を読者に投げかけているのです。
また、ふたりのもう一つのモチーフである「日々の泡」では、はじめは幸せの絶頂にいた主人公たちが、不幸に見舞われ、だんだんと没落していく姿が描かれています。対価なくして当たり前に続く幸せなどない、という非常にリアルなテーマを掲げている作品です。
ラスティカとクロエのモチーフである二作品が「幸せ」をテーマとしており、そこからオマージュされたふたりにも度々「幸せ」をテーマにしたエピソードが描かれているのでしょう。
つまり、ラスティカとクロエには童話「青い鳥」とは直接関係はないものの、そこから生まれた「青い鳥を捕まえると幸せになれる」というジンクスがふたりに大きく関わっているのです。
ラスティカと鳥籠
ラスティカが鳥籠をもって花嫁をさがしている、という設定は、このジンクスが由来のひとつなのかもしれませんね。幸せになるために鳥を探す、という姿をそのまま体現したのがラスティカなのでしょう。また、「幸福な王子」の王子は、南に旅立とうとするツバメを何度も引き留めています。ツバメに行ってほしくない、という王子の願いが、王子をモチーフにしたラスティカの鳥籠という形でオマージュされたのかもしれません。
幸せってなんだろう…どうすれば皆を幸せにできるんだろ?
僕は今すぐにでも幸せになれるよ。クロエ、笑ってみて?
え、どうしたの急に?
きみが笑うと空気が明るくなる。きみは周りを幸せにする力があるんだよ。
そ、そうかな?でも、そうだと嬉しいな…!
ふふ。
さいごに
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。お楽しみいただけましたでしょうか?今回ご紹介したエピソード以外にも、「幸福な王子」をオマージュしたエピソードがまほやくには登場していますので、ぜひみなさんも「幸福な王子」を読んでみて下さいね。
次回はふたりのもう一つのモチーフ「日々の泡」をベースにした考察をしていきます。なかなか独特な世界観、かつヘビーな悲劇なので、うまくまとめられるか不安ですが、、、
それでは、また!
参考文献
幸福の王子 – 結城 浩 訳
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