まほやくに登場する中央の魔法使いアーサー。彼は「アーサー王物語」からオマージュされてキャラクターが形作られています。
今回でアーサー×元ネタの考察は2回目。前回は「アーサー王物語」のあらすじや、聖剣にまつわるオマージュされたエピソードを紹介しました。
はじめに魔法使いの約束に登場する魔法使いたちは、有名文学作品をモチーフとしてキャラクターの根幹が形作られています。今回は中央の魔法使い、アーサーを考察していきます。アーサーのモチーフとなった「アーサー王物語」や、「オズの魔法使い」から、[…]
今回はその続き。アーサーに課せられた死の予言と、オズの魔法使いとの関りを考察していきます。
ここからはネタバレが含まれますのでご注意を!
それでは、レッツゴー♪
まほやくアーサーへの死の予言
オズは賢者との会話で、誰とは名言していませんが、「大いなる厄災との戦いで命を落とす」とスノウ・ホワイトが予言していることをほのめかしていました。
誰とははっきりと言っていませんが、話の流れとしてはまずアーサーでしょう。スノウ・ホワイトが「オズは力技で運命を捻じ曲げている」と話していること、オズがアーサーの紋章を見て驚愕している姿がメインストーリーで描かれています。
おそらく、何かしらの方法でオズはアーサーの代わりに賢者の魔法使いとなり、アーサーを死の予言から遠ざけたのでしょう。そんなことができるのであれば、ある程度大いなる厄災について知見が深いということでしょうか?そのあたりもいつかじっくり考察してみたいですね。
アーサーに課せられた死の予言。これはアーサーの原案となった「アーサー王物語」からオマージュされた設定です。では、アーサー王物語では一体どんなエピソードが語られているのか?あらすじを見ていきましょう!
アーサー王への死の予言
アーサー王物語の終盤、アーサーの息子モルドレッドが、父アーサーの首を捕ろうと大規模な謀反を起こしました。アーサー王は戦いの前、ある夢を見ます。それはかつての部下であり、最も心を許していた友、戦いの中で死んでしまった、騎士ガウェインが夢で会いに来たのです。
ガウェインは、明朝に予定しているモルドレッドとの戦いを延期するよう警告します。もし明朝に戦えば、両軍の人々はほとんど死に、アーサー王も死ぬというのです。アーサー王のもう一人信頼している騎士、ランスロットが1ヶ月後には応援に駆けつけられるため、戦いはその後にするよう助言したのでした。
アーサー王はガウェインの助言に従い、モルドレッドと休戦の誓いを立てます。その調印のための会見で相まみえた、アーサー王とモルドレッド。お互いに信用ができていませんでしたので、もし誰かが剣を抜くのが見えたら、ただちに攻撃するように両軍とも命令が下されていました。
無事に会見が終わると思われたその時。毒蛇が茂みから出てきて、ある騎士の足を噛んだのです。騎士は毒蛇を殺そうと剣を引き抜きました。と、剣の刃に太陽の光がきらりと反射した両軍。相手が裏切ったと思い、突撃ラッパが吹かれ、両軍が衝突しました。後にいう「カムランの戦い」です。
「ああ、なんと不運な日だ。」とアーサー王は嘆きます。両軍はほとんど壊滅し、戦野には10万もの死体が横たわりました。人々が死んでいく様をみて、アーサー王の怒りは計り知れないものとなります。
そして、アーサー王の前に、この謀反の張本人、モルドレッドが現われます。アーサー王はモルドレッドに一騎打ちを申し込みます。「反逆者よ、おまえの最期のときがきた!」
アーサー王の槍がモルドレッドの身体を貫き、モルドレッドの剣がアーサー王の側頭部へと打ち下ろされました。モルドレッドは力尽き、死にました。アーサー王はまだ生きてはいますが、もうすぐ死ぬであろうことは自分でよくわかっていました。
アーサー王は、自分の聖剣エクスカリバーを湖の姫に返すよう部下に言い渡しました。そして、アーサー王は傷を癒すために、船で伝説の島、アヴァロンの谷へと旅立ちました。しかし、傷が癒えることはありませんでした。
アーサー王は予言どおり死に、アヴァロン島で眠りについたのです。
第二部での展開は?
ここで気になるのが、第二部での展開ですね。アーサー王物語を素直にオマージュするのであれば、アーサーは味方に裏切られ、大規模な戦いが起き、そして死ぬことになります。
ただ、今までいくつか原案を考察してきましたが、メインストーリーの展開に原案ががっつり絡んでくることはありませんでした。原案が絡むのは、あくまでキャラクターの根幹の設定と、イベント・キャラクターストーリーなどが主になります。
また、イベントストーリーにおいても、原案をそのままオマージュするのではなく、「原案を読んでいれば気づく」くらいのふんわりとした塩梅で盛り込まれていますので、あくまで、まほやくらしさがあるストーリーとなっているんですね。
なので、アーサー王物語のような展開がそのまま繰り広げられるかというと、おそらくそれはNOでしょう。しかし、ひとつ気になるキーワードが「アヴァロンの谷」です。
アヴァロンの谷は、現実世界には存在しない架空の島で、アーサー王が眠る島です。アヴァロンの語幹「アヴァル/aval」は林檎を意味し、9人の魔女が棲んでいます。魔女はアーサーに、長期にわたって滞在するなら傷を直すと「約束」しました。
まあ、アーサー王物語は騎士道物語なので義理を重んじる人が多く、「約束」というキーワードはしょっちゅうでてくるのですが。「アヴァロンの谷」はなんとなく名前を聞いたことがある人も多いのであろう有名なキーワードです。
もしかしたら、アーサーの運命を変えることのできる場所など、何かしらの形でまほやくでオマージュされるかもしれませんね。
オズの魔法使い×アーサー
ここからは話を変えて、オズの魔法使い×アーサーの関係を考察していきましょう!「オズの魔法使い」は、世界的に有名な童話。まほやく世界のルール、オズの根幹の設定の原案となった童話です。
しかし、オズに「アーサー王物語」の魔法使いの設定が反映されていたように、まほやくでは相方のキャラクターの原案が反映されていることが多くあります。今回はオズの原案である「オズの魔法使い」がアーサーに与えている設定を考察していきます。
あらすじ
まずは「オズの魔法使い」のざっくりとしたあらすじについて。主人公の少女ドロシーが不思議な国に迷い込み、元の世界に戻るために世界各地を奔走するお話です。詳しいあらすじについては下の記事を参考にして下さい。
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童話でのオズは、世界最強の魔法使いと呼ばれています。が、実は魔法も何も使えない、ただの人間だったのです。(ちなみに背の低いおっさん。)ただの人間であるオズは、他の魔法使いに殺されないかと日々不安に過ごしていました。そんな時にドロシーがオズの元を訪ねてきたのです。
オズはこれ幸いと、ドロシーに西の悪い魔女を倒すように命令しました。ドロシーは自分には無理だと言いますが、元の世界に戻るために西の魔女を倒しに行きます。そして幸運が重なり、ドロシーは西の魔女を倒すことができたのです。
魔法使いの弟子
この童話のタイトルですが、英題は「The Wonderful Wizard of Oz」。訳すと「オズの素晴らしい魔法使い」となります。しかし、童話のオズはずっとひとりで引きこもっていたため、オズに魔法使いの知り合いなどいません。では、このタイトルの魔法使いとは誰?となりますね。
ドロシーは魔法使いではなく、ただの人間です。が、幸運を持ち合わせ、そして仲間たちに助けられ、沢山の困難を乗り越えてきました。その奇跡を目にした人からは「偉大な大魔法使い様」と呼ばれるほど。
また、西の魔女を倒しに行ったそもそもの理由は、オズに命令されたからです。世間一般的に、命令を聞く関係といえば、部下であったり、弟子であったり…という関係が思い浮かびますね。
つまり、実質的に見れば、ドロシーはオズの弟子である魔法使い、とも見て取れるのです。そもそもタイトルに主人公の名前や異名が題されるのは、作品のお決まりですからね。
ここで、まほやくアーサーの台詞を思い出してみましょう。
アーサーは「私はオズ様の弟子ですから」と話していますね。この台詞や設定は、オズの魔法使いから影響を受けてオマージュされた設定なのです。まほやくではオズにきちんと魔法を教わっていますから、正真正銘、「オズの魔法使い」でもありますね。
さいごに
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
お楽しみいただけましたか?
アーサーは童話や物語の主人公のように、まっすぐな心根をもった青年です。その根幹は、世界に知られた名作によって形作られていたんですね。
今回ご紹介したエピソード以外も、原案からオマージュされた設定やエピソードがあるので、ぜひ皆さんも読んでみて下さいね!
それでは、また!
参考文献
ライマン・フランク・ボーム、河野万里子/訳、にしざかひろみ/絵 『オズの魔法使い』 | 新潮社
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