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幸福から不幸へ急降下!西の祝祭×幸福な王子&日々の泡を徹底考察!【イベスト考察後編】

まほやく初のイベストにして、名作と名高い西の祝祭。前回は、シャイロックのモチーフである「ヴェニスの商人」と、西の祝祭イベストの関係をじっくりと考察しました。人肉裁判をオマージュした展開などは手に汗握りましたね!

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今回はクロエとラスティカのモチーフ、「幸福の王子」&「日々の泡」と、西の祝祭の関係についてじっくり考察していきましょう!

ここからはあらゆるネタバレが含まれますのでご注意を!

それでは、レッツゴー♪

幸福の王子

まずは、童話「幸福の王子」と祝祭イベストの関係を見ていきましょう!

イベストで注目するキャラクターは、天空離宮で指先に火を灯し、見世物として働いていた「家なし魔女」です。クロエが泡の町で見たことがあり、その当時は路上で生活をしていたといいます。

イベストでも貴族の見世物となっていますから、過酷な人生を歩んでいますね。ラスティカに「きみの幸福を教えて」と言われても、なかなか願いが思い浮かばないくらい、心が疲弊している様子。この家なし魔女のモチーフとなったのが、童話「幸福の王子」に登場する、マッチ売りの少女でしょう。

幸福の王子のあらすじ

ここで超簡単に「幸福の王子」のあらすじをご紹介しますね。ある町に、黄金に輝く王子の像がありました。王子像には心があり、町で貧困に困っている人々を見て、心を痛めていました。

そこに渡り途中のツバメがたまたまやってきます。王子像はツバメに頼んで、自らに装飾された宝石や金を、困っている人々に施していきますが…というのが「幸福の王子」のあらすじとなります。この王子像とツバメが、ラスティカとクロエのモチーフになっていそうなので、もしお時間があれば、過去の考察を読んでみて下さいね。記事の一番下にリンクを貼っておきます。

マッチ売りの少女と家なし魔女

さて、この王子像たちは何人もの人々を助けてきたのですが、その内のひとりがマッチ売りの少女です。彼女の登場シーンがこちら。

「下のほうに広場がある」と幸福の王子は言いました。「そこに小さなマッチ売りの少女がいる。マッチを溝に落としてしまい、全部駄目になってしまった。お金を持って帰れなかったら、お父さんが女の子をぶつだろう。だから女の子は泣いている。あの子は靴も靴下もはいていないし、何も頭にかぶっていない。私の残っている目を取り出して、あの子にやってほしい。そうすればお父さんからぶたれないだろう」

「もう一晩、あなたのところに泊まりましょう」ツバメは言いました。「でも、あなたの目を取り出すなんてできません。そんなことをしたら、あなたは何も見えなくなってしまいます」

「ツバメさん、ツバメさん、小さなツバメさん」と王子は言いました。「私が命じたとおりにしておくれ」

そこでツバメは王子のもう片方の目を取り出して、下へ飛んでいきました。ツバメはマッチ売りの少女のところまでさっと降りて、宝石を手の中に滑り込ませました。「とってもきれいなガラス玉!」その少女は言いました。そして笑いながら走って家に帰りました。

Copyright(C)2000HiroshiYuki(結城浩)

ちなみに、王子像の目は青のサファイアです。ラスティカの瞳の色に似ていますね。この後、王子像は目が見えなくなってしまうのですが、それをみたツバメはある決心をします。ちょっと胸が痛くなるエピソードです…。

さて、話は戻ります。このマッチ売りの少女と、イベストに登場する家なし魔女はなんだかとても似ていますね。この家なし魔女を、ラスティカとクロエが助けるというのも、童話をオマージュしているようで、胸が熱くなります。

この家なし魔女を助けるときのクロエの台詞が、まほやくらしい最高のオマージュとなっているのです。それがこちら。

誰かに幸せを譲っていくより、自分で幸せを掴んで強くなった方が、もっと、たくさんの人を幸せにできるって!

童話「幸福の王子」では、王子像とツバメは自らの身を削って、多くの人々を幸せにしていきました。しかし、その結果ふたりは亡くなってしまうという、悲しい最期を迎えてしまいます。

しかし、まほやくにおいてクロエは、ただ身を削るのではなく、自らが強くなっていく道を選びました。勿論、童話のお話も大好きではありますが、どこか悲しい最期を迎えたツバメ達の心を救ってくれるような、そんな力強さをクロエの台詞から感じますね。

まほやくのモチーフとなったお話は悲劇も多いのですが、それを「今度はそうはいかないぜ!」とばかりに、キャラクターたちが強く逞しく、新たな道を選ぶのもまほやくの魅力です。その魅力を存分に感じられた名シーンでした。

日々の泡

お次は小説「日々の泡」と祝祭イベストの関係を見ていきましょう!

天空離宮では、沢山の労働者が心を疲弊させながら働いています。これはファゴルタという妖精が労働者たちにとり憑き、労働者たちの幸運を貴族たちに与えているためです。そのため、労働者達は文句も言わずに、くたくたになるまで働いているのです。

ラスティカ曰く「幸運を与えられすぎた貴族たちは、人の心を失いかけているのかも…。」とのこと。天空離宮の貴族たちは、賢者たちに銀貨を投げつけたりなど、品のない行いもしていましたから。

この「物言わぬ労働者」と「幸運の均衡」を彷彿とさせるのが、小説「日々の泡」です。

物言わぬ労働者

超簡略して日々の泡のあらすじをご紹介しますね。裕福な青年コランは、パーティでであったクロエという女性に一目ぼれして結婚。幸福の絶頂にいたふたりでしたが、クロエの病気をきっかけに人生が転落していく…という、コランとクロエの人生を描いた物語です。

まずは祝祭イベストで描かれた「物言わぬ労働者」に着目してみましょう。

コランは働かずに生活していける資産があり、クロエと悠々自適な生活をしています。そのため、ふたりは労働者の気持ちが理解できていないのです。新婚旅行の折に銅山を車で横切ったのですが、銅山で危険な作業に当たる労働者たちに、からかうような目で見られます。労働者達からすれば、お金持ちそうな人たちが、こんな銅山にきやがって…という気持ちでしょうか。あきらかにコラン達は場違いです。

それを不快に思ったクロエは、「なんであんな目つきをするのかしら?」と口にします。そのコランとクロエのやりとりの一部始終がこちら。

「だけどあなた、あの人たちみんな家にいて、奥さんにキスでもして、プールや他のことをして楽しんでいた方がいいと思わない?」「そうは思わないな。だってそんなこと全然考えちゃいないんだからな」

「だけど労働するのはいいことだと思っているとしたら、間違いじゃないかしら」「いや、そうは思わないよ。ただみんなから、“労働は神聖だ。実に美しい、いいもんだ”なんて言われてるからさ。“労働者だけが全部のものに対して権利を持ってるんだ”ってね。だけどうまくはめられてしょっちゅう働かせられているもんで、労働の果実を自分たちの自由にすることができないんだな」

「でも何よ、それじゃばかみたいじゃない」とクロエ。

「うん、ばかみたいだよ」とコラン。

「だけどそういうわけだから、労働が世の中で一番いいものだと彼らに信じ込ませる奴らに反対しないんだ。考える必要や進歩しようと努力する必要や、これ以上働くまいと考える必要がなくなるからさ」

「他のお話をしましょうよ。うんざりするわ、その話題は。それよりあなた、わたしの髪の毛が好き」「もう言ったじゃないか」

彼は彼女を膝の上にのっけた。再び幸福いっぱいの気分になれた。「もう言ったろ。君の大ざっぱなところも細かいところもすべて好きだって」

ボリス・ヴィアン著「うたかたの日々」(早川書房)

弁明しておきます。ここだけ読むとコランとクロエがあまり好きになれないかもしれませんが、実際読んでみると愛らしいキャラクターですので、誤解なきように!コランは友人想いの良いやつですし、クロエもかわいいんですよ!

さて、ふたりの会話からわかるように、コランは「労働者は何も考えずに労働に従事している」と考えているようです。文句を言わずに働いているという表面的な点はあっていますが、お金が必要だから文句を言わずに働いている、という考えは抜けているようですね。

日々の泡では、このシーン以外にも、文句を言わずに働く労働者達の姿が生々しく描かれています。コランとクロエの結婚式では、貧しい労働者達が下働きをし、その上でふたりは幸福を噛みしめていました。そして銅山のシーン然り、コランとクロエは労働者達に対して、理解のない発言をしています。

まさに、イベストでラスティカが話していた「雇われ人はくたくたに疲弊しながら、幸運を与え続けて、幸運を与えられすぎた貴族たちは、人の心を失いかけていっているのかも…。」という状態を彷彿とさせますね。

天空離宮の有様は、日々の泡における富裕層と労働者の縮図ともとらえることができます。イベストで登場した「物言わぬ労働者」は、こうして描かれたのかもしれませんね。

幸せの均衡

続いて祝祭イベストで描かれた「幸運の均衡」について着目しましょう。

幸せな結婚生活を送っていたコランとクロエ。ふたりはよく「幸福だ」と口にし、それはもう幸せに暮らしていました。しかしその幸せの最中、クロエが病気にかかってしまいます。治療費に膨大なお金がかかり、あっという間に資産は底をついてしまいました。

コランは今までロクに働いたことがありませんでしたが、なんとかお金を工面しようと労働に従事します。ここでやっと労働者の気持ちが理解できるんですね。しかし、仕事は長続きせず、クロエの病気が快復することもなく、ついにクロエは亡くなってしまいます。コランは周りからもそう言われるほど、「不幸」となったのです。

この幸せ有頂天な状態から、「そんな状態がずっと続くわけないだろ」とばかりに不幸のどん底へと叩き落される様が非常にリアルですね…。この日々の泡の幸福の在り方は、魂の欠片のムルの台詞へ反映されているのかもしれません。

幸せ者に不運を、不幸せ者に幸運を。生きとし生けるものに対して、幸運と、不運は、等しく与えられるべきもの。当たり前に続く幸福も、当たり前に続く不幸もない。

…有頂天だった頃のコランとクロエに聞かせてあげたいですね笑。祝祭イベストで非常に重要なキーとなった「幸運の均衡」は、こうして描かれたのかもしれません。

まとめ

それではここまでの内容を簡単にまとめてみましょう!モチーフとなったお話から、祝祭イベストがどのような影響を受けているかについてですね。

幸福の王子

  • 童話のマッチ売りの少女と、イベストの家なし魔女
  • 幸せを与え続けた王子像とツバメを意識した、クロエの台詞

日々の泡

  • 小説の物言わぬ労働者と、イベストの労働者
  • 小説で幸福から不幸へ直下した展開と、イベストの幸せの均衡を取り戻す展開

こうしてみると、西の祝祭は単体でも面白いのに、バックボーンを知ると2度美味しいという、とんでもイベストなんですね。個人的にも大好きなイベストですので、これからも何度も読み返そうと思います!

ちょっと話がそれますが、クロエとラスティカは、モチーフのお話と関連付けてか、「幸福」をテーマにストーリーが描かれています。幸福の王子も、日々の泡も、貧富の差や幸福について非常に考えさせられるお話となっています。モチーフのお話のテーマを、まほやくでも意識しているのでしょう。

元のモチーフのお話では、主人公たちはバットエンドといっても過言ではない最期を迎えています。まあ、見方によりますけど。まほやくで、クロエとラスティカには、ぜひ幸せを掴みとって欲しいですね!

さいごに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!いかがでしたか?

今回は、西の祝祭に関連付けて、幸福の王子と日々の泡を考察していきました。別の記事では、クロエとラスティカのキャラクター性に着目して考察をしています。名前の由来や、紋章の位置の由来などですね。お時間があればそちらもチェックしてみて下さい。

それでは、また別の考察でお会いしましょう!

See You!

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参考文献

幸福の王子(原作:オスカー・ワイルド 翻訳:結城浩)

うたかたの日々 | 種類,ハヤカワepi文庫 | ハヤカワ・オンライン

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