毎年エイプリルフールに気合の入ったイベントストーリーを展開してくれるまほやく。今回は昨年2021年に公開された「パラドックス・ロイド」を考察していきます。世界観や人物相関図をじっくりみていきますよ~。
ここからはネタバレが含まれますのでご注意を!
それでは、レッツゴー!
あらすじ
もうストーリーなんて忘れちゃったYO!というあなたに簡単にあらすじを。
まどろみの中目が覚めた晶が目にしたのは、桜舞う光るネオン街に、空飛ぶ車。まるで近未来の世界でした。そこで出会ったのはオーエンというひとりのアンドロイド。どうやら晶もオーエンと同じアンドロイドらしいが、なぜ自分がここにいるのか、この世界は一体どういった場所なのか、お互いにさっぱり記憶もなく途方にくれていました。
そこにやってきたのはフォルモーント・シティポリスのカイン。カインはふたりを助け、オーナーの元へ帰る手伝いをしてくれます。右も左もわからないふたりにカインは言います。
「ようこそ、この世界へ。」
それに応えるように、オーエンも呟きます。
「ようこそ、世界。」
「パラドックス・ロイド」の意味
そもそも、タイトルの「パラドックス・ロイド」とはどういった意味でしょう?まずはロイドの意味から。ロイドとはおそらく「ドロイド/droid」の省略形。ドロイドとは人工頭脳を備えたロボットのこと。人の命令に忠実に従う存在です。スターウォーズでいうところのC-3POやR2-D2、BB-8などですね。いや、わりとR2-D2とかは好き勝手やってるけども笑。
まほやくでも度々登場する「Android/アンドロイド」は「an・droid」であり、ドロイドの否定形。メカメカしい見た目のドロイドを否定し、より人間らしい言語や容姿をもった人造人間です。といっても、実はドロイドやアンドロイドの語源はハッキリとわかっておらず、どちらが先に生まれたのかわからない鶏の卵状態。どちらも「人造人間」くらいの意味だと理解しておけばOKだと思います。
また、まほやくでも登場する「Asistroid/アシストロイド」もSF世界にはおなじみで、人間の生活を手助けしてくれるアンドロイドです。他にもペットロイドやヴォーカロイドなど、○○ロイドという表現で用途を強調したロボットの表現がありますね。
では、パラドックスの意味について。「Paradox/パラドックス」とは矛盾、逆説などの意味があります。
みなさん、「親殺しのパラドックス」という言葉をご存知ですか?ちょっと物騒なのですが、わかりやすい例なのでお付き合いを…。たとえばあなたが過去にタイムスリップし、自分が生まれる前の自分の親を殺したとします。しかし、自分が生まれる前の親を殺してしまった場合、自分は生まれる事がないため、そもそも親は殺されないという矛盾が生まれます。しかし、親が殺されないということは、自分が生まれてくる…というぐるぐるループする矛盾が生まれるのです。これを「親殺しのパラドックス」といいます。ここでは矛盾という意味で使われていますね。
では逆説という意味ではどのように使われる事が多いでしょう?有名な例文はこちら。
I always lie is a paradox.
直訳すると”「私はいつも嘘をつく」は逆説である”という意味ですね。どういうことかというと、「私はいつも嘘をつく」という言葉が真実なのであれば、その言葉は嘘ではないので間違っている。つまり「私はいつも嘘をつく」という説の逆を意味している、という事なのです。
まほやく世界は文字が反転していたり、反転や逆といった言葉と縁がある世界ですから、それに関連付けてパラドックスという言葉がタイトルにチョイスされたのかもしれませんね。
ではここまでの情報を整理すると「パラドックス・ロイド」とは「矛盾したドロイド」のこと。ドロイドは人の命令をきき、逆らうことはしません。しかし、このストーリーにはカルディアシステムが搭載された、自らの意思で行動するドロイドが登場します。彼らは人の命令に逆らわないというドロイドの定義とは矛盾した存在。カルディアシステムが搭載された彼らを総称して「パラドックス・ロイド」と指しているのかもしれません。
パラドックス・ロイドの世界の特徴
フォルモーント学園との関係
ここからはパラドックス・ロイドの世界観を構成するキーワードをいくつか深掘りしていきたいと思います。まずは2020年にエイプリルフールストーリーとして公開された「青春と花嵐のノスタルジー」との関係について。
このストーリーの舞台はフォルモーント学園。世紀の天才学者と呼ばれたムル博士が創設し、理事長兼学園長を努めています。ムルは哲学者で天文学者で数学者で発明家で…と、本編にたがわぬ天才っぷり。
この学園都市が発展し、パラドックス・ロイドの舞台となったフォルモーントシティとなったのです。学園長の子孫はパラドックス・ロイドでは総合研究機関の理事長となっており、フォルモーントシティにおいて絶大な影響力を持っています。おそらくムルの事でしょう。学園ストーリーでもSFストーリーでも、ムルはめちゃくちゃ偉いポジションにちゃっかり座っていますね。
実は本編のムルも学校を作ったことがあるのですが、それを廃校にしています。Oh・・・。
ちなみにムルの元ネタとなった「牡猫ムルの人生観」にフォルモーントというワードが出てきます。出てくるのですが、それが何だったのか忘れてしまい…(おい)。また読み返して思い出したら追記しておきますね。
カルディアシステム
パラドックス・ロイドにおいて重要なキーワードとなるカルディアシステム。このシステムを搭載されたアンドロイドは自我を持ち、オーナーの命令に背くことも可能となります。まさに人間の心を持ったアンドロイドなのです。
このカルディアシステムは極秘にフィガロとラスティカが研究していましたが、スノウとホワイトが殺し合う、オーエンがラボから脱走するなど問題が立て続けに勃発。今まさにカルディアシステムが世間に漏れ出す瀬戸際において、人間とは、アンドロイドとは、心とは何か、というテーマがこのストーリーで描かれているのです。
「kərdíyā/カルディア」とはギリシャ語で心臓・心という意味。英語だと「heart/ハート」と同じ意味ですね。心のシステム…いつか私たちの世界でも、プログラムの心が生まれることがあるのでしょうか?
アンドロイドと魔法使い
パラドックス・ロイドではアンドロイドは人間に管理・制御されている存在です。それに対してオーエンは異議を唱えますが、カインはこういいます。「アンドロイドは人間よりも強大な力を持ち、丈夫なボディをしている。だから制御するのだ」と。
同じようなセリフをまほやく本編でもききましたね。クックロビンが「魔法使いは強い力を持っているのに制御できない」と。アンドロイドと魔法使いは意図的に共通点を持たせているようですね。
しかし、ひとつだけ決定的な違いが。それは約束を交わせるということ。アンドロイドは約束を破ったところでペナルティはありません。カインもオーエンとCBSCというソフトクリームを食べさせるという約束を交わし、それを守るために、そして自分自身の心を裏切らないためにフォルモーントシティを奔走するのです。
セルフオマージュされたキャラクター達
パラドックス・ロイドには本編に登場したサブキャラクターなどが、ちょっとした隠し要素として登場します。
例えば、フィガロ博士にインタビューしていたヂェン。彼女は病の沼のストーリーに登場する毒鳥ヂェンのオマージュ。深い青と黄色と赤が混ざりあった羽をもつ、美しい鳥でした。しかしヂェンは人間にとって有害な存在のため、フィガロに排除されてしまったのです。
パラドックス・ロイドでは青と黄と赤のグラデーションヘアーの女性アナウンサーとしてオマージュされています。しかもフィガロのインタビュアーとして。これは幸せなオマージュというか、痛烈な皮肉というか(苦笑)。パラドックス・ロイドの世界では幸せになって欲しいですね。
他にも、街中にはチレッタをオマージュしているであろう「クリスタルスカルを抱いた魔女のイラストが描かれた香水瓶」のホログラムが投影されていたり、イベントストーリー「悪戯好きな仮面のエチュード」に登場した仮面が投影されていたりと、細かいところまで工夫が凝らされていますね。
イベントストーリー「夢抱く飛行士のバラッド」に登場するベンジャミンや、「純真な機織りのバラッド」に登場するエマの名前もネオン看板に見られます。他にも懐かしい名前がみられるので、よかったら探してみて下さいね。
これはオマージュとは関係ないのですが、タワーの天辺に表示されているネオンにはおそらくこう書かれています。「アシストロイドのID登録は法律で義務づけられています。」と。
まさかまほやくの背景で日本語を見ることになるとは…。このパラドックス・ロイドの世界は晶の夢の中のような世界。晶はまほやく世界の文字が読めませんから、自身に馴染みの深い日本語で世界が構築されているのでしょう。
まほやく世界の文字は反転し、右から左に書き記されていますが、パラドックス・ロイドの世界では私たちの世界と同じように、左から右に文字が記されているのにも納得ですね。
人物相関図
ここからはパラドックス・ロイドにおける人物相関図をみていきたいと思います。ストーリーには登場しないキャラクターも、立場や状況が語られています。それらをまとめた総勢21人の相関図がこちら。(間違ってるところがあれば教えてくれると嬉しいぞ!)
1時間くらいで作れるだろ~って思ったら、まさかの6時間かかりましたとさ。恐るべきフォルモーント…笑。文字がつぶれて見にくい場合は、拡大してみて下さい。(後ほどTwitterの画像リンクも載せますね。)では、いくつかピックアップして関係性を深掘りしていきましょう!
オーエンとカイン
まずは今回のイベントで大活躍したふたりから。本編との大きな違いは、ふたりが因縁関係にないこと。オーエンがカインの目玉を獲っていないため、カインはオーエンを嫌っていません。2周年ストーリーではだいぶ軟化していましたが、メインストーリー第1部時点ではカインはかなりオーエンのことを嫌っていました。それでもオーエンを仲間だと言える器のデカさはすごいですね。
しかし、パラドックス・ロイドではカインはオーエンにCBSCを奢る約束を交わしますし、彼を助けようと尽力します。そして友人のような関係となったのです。本編では考えられない関係ですね。
しかし、本来のカインの姿はパラドックス・ロイドのように友好的で優しいおおらかな人柄。まだ先の話にはなりそうですが、カインは自分の目をオーエンから実力で取り返そうとしています。いつかそれが叶ったら、カインはオーエンに対する因縁がなくなり、パラドックス・ロイドのように気兼ねない友人となれるのかもしれませんね。
オーエンは一見本編とはあまり差異はないように感じますが、その実かなり本編を意識して設定が練られています。まず、本編のオーエンは死ぬことがないゾンビ体質です。そのため、死を恐れることはありません。しかし、ラスティカのラボでバッテリーを抜かれるとき、もう目覚めない事を恐れてかなり抵抗します。そう、あのオーエンが死を恐れているのです。
これも本編ではなかなか考えられないシチュエーションですね。もしも本編でオーエンの魂が体に戻ったら、パラドックス・ロイドのように死を恐れることもあるのでしょうか…。
また、パラドックス・ロイドのオーエンは生まれてからずっとラボに隔離され、存在を秘匿されてきました。そして、ストーリー終盤で自由の身になると、心から喜んでいる姿が描かれています。
まほやく本編のオーエンは、永い間地下牢に閉じ込められていました。どういった経緯で自由を手に入れたかはまだ描かれていませんが、もしかしたら解放されたときはパラドックス・ロイドのように無邪気に自由を喜んだのかも?
他にも、ストーリー序盤のオーエンは記憶をなくしていたりと、本編のオーエンを意識した設定となっています。そのあたりを意識してストーリーを読むと、より楽しめそうですね。
ラスティカとクロエ
パラドックス・ロイドのラスティカはアンドロイドや家庭用ロボットのエンジニアであり、かなり人見知り。元アンドロイド依存症のため、今でもクロエ以外の人とはなかなかスムーズに会話できません。まほやく本編のラスティカは人見知りせず、社交的な人。だいぶ本編とは印象が異なりますね。
また、クロエに励ましてもらっている姿も。本編ではラスティカがクロエの背中を押す姿が目立ちますが、パラドックス・ロイドでは逆。クロエがラスティカの背中を押しています。これもまだ先の話ですが、本編では花嫁をめぐってラスティカに悲劇が舞い降りるかも?その時、パラドックス・ロイドのようにクロエがラスティカの支えになってくれるかもしれませんね。
そしてもう一つ気になる点がこちら。ラスティカの上着には「Bird Cage」の文字が書かれています。
ラスティカはクロエを鳥籠から解放したくて…自由を与えたくてラボから連れ出したと言いました。しかし、ラスティカ自身はカルディアシステムの開発者である事を含め、過去の呪縛からは逃れられていなそう。上着が前身を取り囲むような作りにもなっていることから、ラスティカの心は未だ鳥籠の中にあることを示唆しているのかもしれませんね。
Hello World
さいごにロマン考察をひとつ。パラドックス・ロイドのストーリーでは「プログラム」という言葉がよく使われます。このプログラムについてちょっとした小ネタがあるのでお話してみますね。
私たちの世界でプログラミングをする場合、まず環境構築という事を行います。みなさんもまほやくを初めて遊ぶ前に、アプリをインストールして、データをダウンロードして…と準備をしますよね。それが10倍くらい複雑になった下準備を環境構築といいます。
この環境構築が終わったあと、実際にプログラミングができるか簡単なテストをします。その多くが、画面にある文字を表示させる、というテストなのです。その文字とは「Hello World」。直訳すると「こんにちは、世界。」です。
必ずしもHello Worldという文字を表示させなければいけないわけではありませんが、これはエンジニアであれば誰でも知っているお約束であり、通例なのです。
なぜHello Worldという言葉が習慣になったのかは定かではありません。が、この言葉が表示されると、プログラミングの世界に歓迎されたような感覚になりませんか?パソコンから「プログラミングの世界へようこそ!これからあなたは好きなものを作れますよ!」と話しかけられているように感じて嬉しくなります。
では、ここでパラドックス・ロイドの冒頭のシーンをみてみましょう。カインがオーエンと晶に言います。「ようこそ、この世界へ。」そしてオーエンも言います。「ようこそ、世界。」と。
もちろん、Hello Worldと関係があるかはわかりません。が、このプログラムされたシステムが溢れる近未来の世界のスタートにはふさわしい演出にも感じますね。関係があるといいなーと思ったロマン考察でした。
さいごに
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!お楽しみいただけましたか?
このパラドックス・ロイドは期間限定のイベントストーリーとは思えないほど世界観が魅力的に作りこまれていて、多くの賢者が虜になったはず。もしまだ読んだことのない人がいたら、ぜひ解放して下さい!今回語りきれなかったお楽しみが山ほどありますよ!
この記事はエイプリルフール前に書いているので、今年はイベントがあるのかはわかりませんが、何かお楽しみがあると嬉しいですね!
それでは、また!
関連記事
毎年、エイプリルフールに特別なストーリーを公開してくれるまほやくくん。今年は海賊がテーマ!大航海時代に胸が踊る賢者様も多いはず!今回は人物相関図や、ちょっとした小ネタ、時代背景、そしてタイトルの「スクアーマ」の意味について考えてい[…]
毎年、エイプリルフールに気合の入ったイベントを開催してくれるまほやくくん。今年はなんと、マフィア!ワルの道!全員、揃いも揃ってワルの道!タイトルの「アルテレーゴの掟」に込められた秘密とは?ストーリー中に出てきた騒動の元凶って何者?[…]
過去に公開されたイベントストーリー「幸せの鐘に願いを込めて」では、なんとまほやくがサンリオとコラボしました。かわいいキャラクター達と魔法使い達が会話するという夢のような光景に、血わき肉踊った賢者も多いはず!ふおおおおお!2022年[…]
まほやくにはメインストーリーとは別に、数多くのイベントストーリーが描かれています。今回は西と中央の魔法使いが活躍した「夢抱く飛行士のバラッド」を振り返りながら考察していこうと思います。イベスト舞台の原案となった場所や、描かれたキャ[…]
参考文献
シェアしてもらえると嬉しいです!