眼鏡男子…いいよね!というわけで、イベントストーリー「銀宿る卵屋のファンタジア」を考察していきます。今回のイベントの元ネタって?各キャラクターの心情って?など色々考えていきます。
ここからはネタバレが含まれますのでご注意を!
それでは、レッツゴー♪
あらすじ
まずは物語冒頭のあらすじを簡単にご紹介。ある日、賢者のもとに1つの依頼が。どうやら「銀の卵屋」という銀細工店に、大いなる厄災の影響で魔物が出現し困っているという。ネロは「銀の卵屋」に覚えがあるらしく、浮かない顔をしていた。
賢者一行は森にある銀細工店を尋ねる。すると、強い魔力を含んだ、異常な大きさの卵があったのだった。それは大いなる厄災の影響で出現したようで…?
銀の卵の由来
金細工の卵 インペリアルイースターエッグ
House of Fabergé, CC BY 2.0 https://creativecommons.org/licenses/by/2.0, via Wikimedia Commons
今回のイベントのキーアイテムである、銀細工の卵。(正確には鶏の卵であり、中から生まれるのが銀細工なのですが。)これを見たときに、パッと思いついたのが、インペリアルイースターエッグでした。名探偵コナンの映画が好きなら、もしかしたら覚えがあるかも?「バルシェ、肉買ったべか?」のフレーズで有名な、あのインペリアルイースターエッグです!(わからない人は「世紀末の魔術師」を見てね☆)
インペリアルイースターエッグとは、1885年〜1916年の期間にロシア皇帝に納められた金製の卵(イースターエッグ)のことです。その数は50個あり、綿密で華やかな意匠が施されていたり、工夫を凝らした仕掛けがされていたりと、ひとつひとつが素晴らしいオブジェなのです。
金細工師 ファベルジェ
User:Jack1956, Public domain, via Wikimedia Commons
その皇帝に贈られたイースターエッグを作成したのは、金細工師ピーター・カール・ファベルジェ。彼はロシアの著名な宝石商であり、金細工師です。人物像としては「地方の紳士の雰囲気」であったそう。
モスクワで開かれた「The Pan-Russian Exhibition/全ロシア博覧会」において彼の作品は金賞を受賞。以降、皇室御用達のロイヤルジュエラーとなったのです。
彼の作品は意匠や綿密さを含め飛びぬけて素晴らしく、現代においても数多くのコレクターが作品を求めています。ひとたびオークションにかけられれば、その値段は1億ドルを超えることもあり、世界有数の宝なのです。
ファベルジェが残した作品はイースターエッグのみではありません。彼は工房を持ち、ファベルジェ本人や弟子たちをはじめとして、銀食器やライター、扇子など、多岐にわたって作品を作り上げていきました。
写真提供:Faberge Museum, St. Petersburg | The mission of the Faberge … | Flickr
今回、イベントストーリーに登場した「銀の卵屋」の作品は、まほやく世界において非常に希少かつ価値が高いもの。世界中のコレクターが追い求め、値段も破格になるといいます。また、「銀の卵屋」の店主は紳士的なファベルジェを彷彿とさせるクラフトマンのイメージもあります。このあたりの設定は、ファベルジェと、イースターエッグを初めとした作品達になぞらえてオマージュしたのかもしれませんね。
ちなみにGoogleマップ公式アカウントが、イースターエッグが飾られている「ファベルジェ美術館」の360°ストリートビューを公開しています。まるで美術館を歩いているような感覚を味わいながら、数々の名品を見ることができます。館内はまるで宮殿のように豪華絢爛ですので、お時間があれば下のリンクを覗いてみて下さい。めちゃ楽しいよ!(ステマじゃないよ!笑)
イースターエッグの語源
Geolina163, CC BY-SA 4.0 https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0, via Wikimedia Commons
そもそも、イースターエッグとは一体何でしょう?それはキリスト教の「イースター/復活祭」というお祝いに使用する卵のこと。キリストは一度亡くなり、その3日後に復活したといいます。その復活をお祝いする春のイベントなんですね。
卵の殻が破れ生命が誕生する様が、キリストの復活を模していると考えられ、イースターで卵がよく食べられるようになったんだとか。この卵を縁起物としていたため、ロシア皇室は豪華なイースターエッグをファベルジェに作らせたのです。皇室のイースターエッグ、という意味で「インペリアル・イースターエッグ」と呼ばれるのですね。
この「イースター」の語源は所説ありますが、そのひとつに、ゲルマン神話の春の女神「エオストレ/Eostre」の名前を由来とする説があります。紀元前には春にエオストレを讃える祭りが行われており、ちょうどイースターの時期と被ります。そこでなんやかんや混ざりあって、「エオストレ/Eostre」→「イースター/Easter」となったとかなんとか。
Carl Emil Doepler (1824-1905), Public domain, via Wikimedia Commons
また、「エオストレ/Eostre」から派生した言葉がもう一つあると言われています。それが「東/East」。春の女神は太陽と共にやってくると言い伝えられており、太陽が昇る方角を「東/East」と呼ぶようになった、という説があるのです。
なので、間接的に「Easter Egg」は「東の卵」とも捉えられなくもないかもしれなくもないかもしれませんね!(雑w)それに関連付けて、今回のイベントは東の魔法使いが活躍したのかもしれません。
ちなみに、イースターの日付は毎年異なります。春分の日以降、最初の満月から一番目にくる日曜日がイースターとされ、今年2022年は4/17です。満月も関係してくるイベントはまほやくにピッタリですね!
しかし、毎年4月はエイプリルフールのイベントを行っていたり、特に今年は春にメインストーリーが更新されますので、4月にイースターを題材としたイベントはスケジュール的に難しいのかも。そのため、2月と少し早いですがイースターエッグを題材にイベントが行われたのかもしれません。
銀のスプーン
銀の性質と象徴
イベントストーリーに登場した銀のスプーン。まほやくの一部地域では魔除けや厄除けのご利益があるとされ、赤ん坊や旅人にお守りとして渡すことがあるそう。現代の日本やヨーロッパでも概ね同じようなご利益があるとされ、出産祝いにプレゼントする風習があります。この銀のスプーンに関して調べてみると、なかなか面白い由来がわかったのでお伝えしますね。
銀には高い殺菌作用があり、毒(硫化ヒ素)に触れると黒く変色する性質があります。そのため、古くから厄払いとして重宝されていました。また、銀の弾丸(シルバーブレッド)という、狼男を一撃で倒せる銃弾の言い伝えなど、古来から神聖なものとして扱われていました。
占星術などでは、その美しい光沢から銀は月を象徴するものと考えられています。金は太陽を、銀は月を司っているのです。このあたりのエピソードは、まほやくにピッタリですね!
銀のスプーンのことわざ
Paul Revere, CC0, via Wikimedia Commons
みなさんがレストランで食事をすると、スプーンやフォークなどのカトラリーはお店側が用意してあるのが普通ですよね。しかしテーブルセッティングが普及したのは18世紀頃から。それまでは各自が自分のカトラリーを用意して、常に持ち歩いていたのです。
中でも当時は貴重で高価であった銀で作られたスプーンを持つことは、土地の所有者など高い階級であることを示す身分証代わりをしていたのです。特に、中世の農民や職人は仕事で爪が汚れることも多かったため、奴隷と間違われる事を避けるために銀のスプーンを持ち歩いたといいます。
この風習を揶揄してか1719年に英訳された小説、『ドン・キホーテ』にはこのようなことわざが出てきます。「Every Man is no born with a Silver Spoon in his Mouth / 人は皆、銀の匙を口にくわえて生まれてくるのではない」
捉え方によっては、痛烈な皮肉にも聞こえますね。このことわざは現代のアメリカでも通用し、あの人は裕福な家庭に生まれたのだろう、という慣用句となっています。時にはジョークとして、時にはガチの悪口として使われますので、銀のスプーンを話題にするときは、少し注意した方が良さそうですね。
しかし、ヨーロッパではこの風習をポジティブに捉えたのでしょう。出産祝いとして赤ちゃんに銀のスプーンを贈る風習が生まれ、それが日本にも伝わったのです。国や地域によって捉え方や風習が異なるのはとても興味深いですね。地域によって在り方が違うことを理解してか、イベントストーリーにおいてヒースクリフは「地域によっては」という言い方をしています。・・・配慮って大事ですね。
ポジティブな面を生かしたストーリーは、「なんか良いこと知れたな♪」という気分になれて、個人的には好きですね。出産祝いを贈ることがあれば銀のスプーンを選んでみようと思います!
ヒースクリフの望みと銀豹
このイベントストーリーの終盤、ヒースクリフが育てていた卵が孵り、中から銀の豹のオブジェが生まれました。賢者は「すごく綺麗ですね!」と感動のコメントを述べていましたが、おそらく戦慄した読者も多いはず・・・。
ヒースクリフは先の大いなる厄災との戦いで奇妙な傷を負い、「強い恐怖を感じると黒豹へ変身する」という、とんでもない十字架を背負っているのです。しかし、ヒースクリフ自身は、自分の奇妙な傷について知りません。知っているのはシノ・カイン・オーエン・賢者のみ。
以前、東の祝祭のイベントストーリーで、ヒースクリフの傷についてオーエンがバラそうとしたとき、シノが遮るシーンがありました。それをヒースクリフは奇妙に思い、シノが何を隠しているのか気になっている様子。まさか自分の傷について他の人がしっているとはヒースクリフは思っていません。が、何か隠されているのは察しているため、その秘密を知りたいと望んでいるのかもしれませんね。
ということをふまえて、では何故ヒースクリフの銀の卵から豹が生まれたのか。これは人によって千差万別の解釈があると思うので、あくまで個人の考えということで。他の方の考えもみてみると、とても面白いと思いますよ!
先に述べた通り、ヒースクリフは自分の秘密を知りたいと望んでいます。銀の卵から生まれるものは、育て親の魔法使いの望みが反映されるそうです。ヒースクリフが知りたい秘密・・・それは黒豹に変身すること。つまり、ヒースクリフが求める答えそのものが形となって生まれたのかもしれませんね。
ちなみに、ヒースクリフは自分が豹に変身することを知らないので、知りもしない豹が生まれるのはおかしくないか?とも思いますが、主人の望みを反映させているのは卵側なのでしょう。ヒースクリフが「豹よ生まれろ~」と直接的に望んでいるわけではありませんので。
ですので、卵サイドからすると「ご主人が秘密を知りたいと望んでいる!それなら直接的に豹のオブジェになろう!なんで僕がご主人の傷を知っているかって?それはご想像におまかせさ!」みたいな感じでしょうか。いや、ここまで明確な意思はないと思いますが笑。
ヒースクリフがいつどのように自分の傷について知るのか、また、大いなる厄災との戦いで傷は発症するのか、など気になるところですね。今後のメインストーリーを楽しみにしたいと思います!
さいごに
ここまでお読みいただきありがとうございました!お楽しみいただけましたか?今回は情報を集めるのになかなか苦労しましたが、それ以上にロマンが散らばっていたので、調べ物がとても楽しかったです。まほやくは関係ないですが、もう一度コナンの世紀末の魔術師を観たくなってきました・・・。バルシェ・・・。
それでは、また!
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