まほやくきってのおしどり夫婦、クックロビンとカナリア。実はこのふたりにも、原案…つまり元ネタがあるのをご存知ですか?今回はこのふたりのルーツについて考察していきます。ぜひ楽しんでいって下さい。
この先、ネタバレが含まれる場合があるので気をつけてくださいね。
それでは、レッツゴー♪
クックロビンとカナリアの由来
マザーグースのクックロビンとは?
そもそもクックロビンって何?というお話から。みなさん、どこかで「だれが殺したクックロビン?」という歌を聞いたことがありませんか?これは「だれが殺したクックロビン/Who killd Cock Robin」というマザーグース、いわゆる童謡です。
クックロビンとはヨーロッパコマドリのこと。赤い胸が特徴的な、可愛らしい鳥ですね。イギリスではなじみの深い鳥で、政府に指定はされていないものの、民衆からは国鳥として認識されているようです。
写真提供:European robin | European robin – taken at Woodford Park, Wo… | Flickr
ヨーロッパコマドリは英語で「redbreast/赤い胸」と呼ばれていました。そこで15世紀ごろに、種に人名をつける事が流行。「Robin redbreast」と呼ばれるようになり、そこから更に省略されて「Robin/ロビン」という愛称で呼ばれるようになりました。
そこに「Cock/雄」をつけて、「Cock Robin/クックロビン」と童謡では呼んでいるんですね。
童謡の内容
それでは、童謡はどんな内容なのでしょう?以下は日本語訳の引用になります。
誰が駒鳥 殺したの
それは私 とスズメが言った
私の弓で 私の矢羽で
私が殺した 駒鳥を
~中略~
空の上から 全ての小鳥が
ためいきついたり すすり泣いたり
みんなが聞いた 鳴り出す鐘を
かわいそうな駒鳥の お葬式の鐘を
引用元:クックロビン – Wikipedia
この童謡は、クックロビンの死から、お葬式までの経緯を歌っているんですね。クックロビンを射たのはスズメ。このスズメがまほやくにとってキーキャラクターとなるのです。
カナリアの日本名
写真提供:Untitled | steve p2008 | Flickr
カナリアはご存じの方も多いでしょう、黄色の可愛らしい小鳥です。和名は「金糸雀」、名前に雀(スズメ)という漢字が入っていますね。童謡のクックロビンはスズメに射られて命を落としました。まさに敵とも言えるスズメの名が、カナリアにつけられているのです。
まほやくでは、童謡とは反転して、おしどり夫婦となったふたり。立場や性格を、元のモチーフから反転させてオマージュすることは、まほやくでは間々ありますので、これもその一例でしょう。
名前については、さすがにクックロビンの奥さんに「スズメ」というストレートな日本名をつけるのはためらわれたのか、代わりにカナリアの名がつけられたのでしょう。
ちなみに、ヨーロッパコマドリはヨーロッパ全域に生息しているほか、カナリアの語源であるカナリア諸島にも生息しているそう。他にも、川端康成の短編「金糸雀」という、不倫夫婦の悲劇を描いた小説もあり、こういった事も関係して、クックロビンの奥さんの名前がカナリアになったのかもしれませんね。
クックロビンとカナリアのビジュアル
クックロビンのビジュアル
ここからは、ふたりのビジュアルについて見ていきましょう!まずはクックロビンから。ブラウンをベースとして、黄色や青・黒などの差し色が使われていますね。
特徴的なのは黄色×黒の縞模様のネクタイ。カナリアの黄色がモチーフかな、とも思ったのですが、実は童謡にヒワという鳥がでてきます。ヒワは黄色×黒色をした特徴的な小鳥。どちらかというと、カナリアよりヒワをモチーフにしていそうですね。
写真提供:Siskin – Carduelis spinus | Dumfries & Galloway Scotland | Flickr
他にも、童謡にはミソサザイやツグミなどの小鳥が登場しています。ミソサザイはジャケットのような淡いブラウンの色合いで、ツグミはベストのような明るい茶色の羽をもつ小鳥です。
童謡には様々な動物が登場しますが、小鳥に分類されるのは上の3羽。
童謡の締めくくりでは、全ての小鳥が泣きながらクックロビンを見送っています。そこから着想を得て、童謡にでてくる小鳥から、ビジュアルのモチーフとしたのかもしれませんね。
カナリアのビジュアル
カナリアは由来の鳥のように、淡い金の髪色です。服装はThe・メイドという格好ですね。胸元には、中央の国の国章が矢で射貫かれているブローチをつけています。
矢は童謡でスズメがクックロビンを射貫いたことから由来がきているのでしょう。ただ、なぜ国章を射貫いているのか…。
これは全くの予想ですが、特に悪い意味は無いと思っています。まほやくのカナリアは、和名の金糸雀から由来がきていると思われるので、身に着けているものも日本式に考察してみますね。ここからの考察は自信がないので、あくまでこんな考察もあるんだなーくらいに楽しんでいただければ。
破魔矢
日本で矢、といえば破魔矢を思い浮かべませんか?(無理やりw)縁起物としてお正月に神社で授けてもらう、あの矢です。破魔矢は幸運を射止める縁起物とされています。
由来は、仏教にでてくる「烏摩勒伽/うまろきゃ」という、とんでもなく名前が読みにくい夜叉が持っていた、金の弓矢からきていると言われています。烏摩勒伽を祭っている日光山輪王寺では、これをかたどった破魔矢を授けているので、興味があれば下のリンクから見てみて下さい。(ステマじゃないよ!笑)
破魔矢の飾り方は、矢の先端は上にしてはいけません。鬼門と呼ばれる、古来から忌むべき方角とされている方向に矢の先端を向けます。鬼門は北東ですが、その反対である南西は裏鬼門と呼ばれ、こちらも忌むべき方角となっています。
破魔矢はこのどちらかに向ける事が多く、矢の先端を上に向けてはならないとなると、ブローチとして身に着けるには裏鬼門に矢の先端が自然と向きそうですね。
ここで、カナリアのブローチを見てみましょう。空を北と見立てた場合、金の矢が裏鬼門の方角である南西を向いていますね。つまり、日本式で考えると、カナリアが身に着けているブローチは、不穏なものではなく縁起物となるのです。
もしかしたら、中央の国に幸運が宿るよう、願いが込められたブローチなのかもしれませんね。旦那さんは中央の国のお役人なわけですし。夫婦仲がよろしいことでなによりです。
さいごに
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。楽しんでいただけましたか?
原案が悲劇なこともあり、ふたりが別れてしまわないか少々不安にもなりますが、逆に考えれば、まほやくでは「反転」してハッピーエンドになる未来を示唆しているのかも?
これからも名脇役として、ふたりの活躍に目が離せませんね!永遠にラブラブしててくれ!
それでは、また!
参考資料
Mother Gooseの世界 そのはち 誰が殺したクックロビン?
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