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ミスラはインドの魔法使い?芥川龍之介が描く「魔術」を履修しよう!【元ネタ考察】

まほやくも、もうすぐ4周年!現在ミスラのカウリスイベントが開催中ですが、皆さん楽しんでますか?私はめちゃめちゃ楽しんでます!今回はそのミスラにスポットをあてた元ネタ考察。芥川龍之介の「魔術」を考察していきます!

日本が誇る文豪・芥川龍之介が描く「ミスラ君」とは?まほやくミスラとの関係とは?そしてそして、なんと同じく日本の文豪・谷崎潤一郎も登場。色々とじっくり考えていきますので、どうぞお付き合い下さい!

ここからはネタバレが含まれますのでご注意を!

それでは、レッツゴー♪

芥川龍之介「魔術」

Akutagawa Ryunosuke photo2

芥川龍之介

http://www.ca-kugenuma.com/concept/index.html, Public domain, via Wikimedia Commons

「魔術」は芥川龍之介の短編小説です。基本的にまほやくミスラの設定はミトラ神話をモチーフにしていると思われますが、この「魔術」からも少しモチーフを得ていそうです。

物語を辿りながら、時折、一時停止して考察していきましょう。物語の時代設定はおそらく1900年代初期。東京都大田区大森にある、とある西洋館が舞台です。それでは、冒頭の文を読んでみましょう。

ミスラ君とミトラ神

ある時雨の降る晩のことです。私を乗せた人力車は、何度も大森界隈の険しい坂を上ったり下りたりして、やっと竹藪に囲まれた、小さな西洋館の前に梶棒を下しました。もう鼠色のペンキの剥げかかった、狭苦しい玄関には、車夫の出した提灯の明りで見ると、印度人マティラム・ミスラと日本字で書いた、これだけは新しい、瀬戸物の標札がかかっています。

マティラム・ミスラ君と云えば、もう皆さんの中にも、御存じの方が少くないかも知れません。ミスラ君は永年印度の独立を計っているカルカッタ生れの愛国者で、同時にまたハッサン・カンという名高い婆羅門(ばらもん)の秘法を学んだ、年の若い魔術の大家なのです。

私はちょうど一月ばかり以前から、ある友人の紹介でミスラ君と交際していましたが、政治経済の問題などはいろいろ議論したことがあっても、肝腎の魔術を使う時には、まだ一度も居合せたことがありません。そこで今夜は前以て、魔術を使って見せてくれるように、手紙で頼んで置いてから、当時ミスラ君の住んでいた、寂しい大森の町はずれまで、人力車を急がせて来たのです。

青空文庫 芥川龍之介「魔術」

ここで登場する「私」は、芥川自身ともとれます。友人とは谷崎潤一郎を指していると思われますが、このあたりの解説は後ほど。物語には早速ミスラ君が登場しましたね。おそらく芥川は、ミトラ教の神、ミトラ神をちょっとだけ意識しながら物語を描いていると思われます。

というのも、ミトラ神は「約束」の神様であり、この後「私」とミスラ君がある約束を交わすのです。ミトラ教とは、古代イラン・インドで信仰されていました。まほやくミスラの育成スポット・死の湖や、ルチルの設定に深く関わってきます。お時間があれば過去の考察も読んでみて下さい。

ミスラ×ミトラ神話

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それでは物語の続きを読みましょう。

ミスラの喋り方とカラー

私は雨に濡れながら、覚束ない車夫の提灯の明りを便りにその標札の下にある呼鈴の釦(ボタン)を押しました。すると間もなく戸が開いて、玄関へ顔を出したのは、ミスラ君の世話をしている、背の低い日本人の御婆さんです。

「ミスラ君は御出でですか。」

「いらっしゃいます。先ほどからあなた様を御待ち兼ねでございました。」

御婆さんは愛想よくこう言いながら、すぐその玄関のつきあたりにある、ミスラ君の部屋へ私を案内しました。

「今晩は、雨の降るのによく御出ででした。」

色のまっ黒な、眼の大きい、柔やわらかな口髭くちひげのあるミスラ君は、テエブルの上にある石油ランプの心を撚ねじりながら、元気よく私に挨拶あいさつしました。

「いや、あなたの魔術さえ拝見出来れば、雨くらいは何ともありません。」

私は椅子に腰かけてから、うす暗い石油ランプの光に照された、陰気な部屋の中を見廻しました。

ミスラ君の部屋は質素な西洋間で、まん中にテエブルが一つ、壁側に手ごろな書棚が一つ、それから窓の前に机が一つ――ほかにはただ我々の腰をかける、椅子が並んでいるだけです。しかもその椅子や机が、みんな古ぼけた物ばかりで、縁(ふち)へ赤く花模様を織り出した、派手なテエブル掛でさえ、今にもずたずたに裂けるかと思うほど、糸目が露(あらわ)になっていました。

青空文庫 芥川龍之介「魔術」

ミスラ君が喋りましたね。ミスラ君はこの後も丁寧な敬語で話し続けます。まほやくミスラの基本的な設定はミトラ神話をモチーフにしていそうですが、神話なだけあって台詞などのキャラクター性は感じられません。

過去ムルやネロ、シノなど、モチーフ小説から性格を起こしていそうなキャラクターもちらほらいます。全員が全員ではありませんが、一部そんなキャラもいるんですね。まほやくミスラが敬語を使うのは、「魔術」のミスラ君を意識しているのかもしれません。

また、まほやくキャラのカラーリングも、モチーフ小説から得ている事が多いです。ムル、ネロ、スノウ・ホワイト、ラスティカなどなど。ミスラもそうなのかな?と思うのですが、あんまり「これだ!」という部分は見つからず。

しいて言えば、「縁(ふち)へ赤く花模様を織り出した、派手なテエブル掛」が作中に何度も登場し、印象的に描かれています。ミスラの髪色を彷彿とさせるかも?させないかも?

また、実は谷崎潤一郎の小説にもミスラ君が登場するのですが、彼はエメラルドの指輪をつけていました。これもまほやくミスラの眼の色を彷彿とさせるかも?ないかも?ラスティカの瞳の色は、モチーフ小説に登場したサファイアからきていると思われます。ミスラも同じように宝石を瞳の色のモチーフにしたのかも?判断はあなたにお任せします!

ミスラ君の「約束」

それでは物語に戻りましょう。この後「私」はミスラ君に、実際にいくつか魔術を見せてもらいます。テエブル掛の花柄が宙に浮き出たり、ランプがひとりでに回ったり、本が浮かんだり。

実は、この魔術は修行をすれば誰にでも使えるようになるというのです。「私」はぜひ魔術が使えるようになりたいと、ミスラ君に申し出ます。

「いや、兼ね兼ね評判はうかがっていましたが、あなたのお使いなさる魔術が、これほど不思議なものだろうとは、実際、思いもよりませんでした。ところで私のような人間にも、使って使えないことのないと言うのは、御冗談ではないのですか。」

「使えますとも。誰にでも造作なく使えます。ただ――」と言いかけてミスラ君はじっと私の顔を眺めながら、いつになく真面目まじめな口調になって、「ただ、欲のある人間には使えません。ハッサン・カンの魔術を習おうと思ったら、まず欲を捨てることです。あなたにはそれが出来ますか。」

「出来るつもりです。」

私はこう答えましたが、何となく不安な気もしたので、すぐにまた後あとから言葉を添えました。

「魔術さえ教えて頂ければ。」

青空文庫 芥川龍之介「魔術」

この後、「私」はミスラ君に魔術を教わります。それから1ヶ月くらい経った頃、「私」は銀座のある倶楽部(クラブ)に、友人5~6人で集まりました。

私たちは葉巻の煙の中に、しばらくは猟の話だの競馬の話だのをしていましたが、その内に一人の友人が、吸いさしの葉巻を暖炉の中に抛りこんで、私の方へ振り向きながら、「君は近頃魔術を使うという評判だが、どうだい。今夜は一つ僕たちの前で使って見せてくれないか。」

「好いとも。」

私は椅子の背に頭を靠(もた)せたまま、さも魔術の名人らしく、横柄(おうへい)にこう答えました。

「じゃ、何でも君に一任するから、世間の手品師などには出来そうもない、不思議な術を使って見せてくれ給え。」

友人たちは皆賛成だと見えて、てんでに椅子をすり寄せながら、促すように私の方を眺めました。そこで私は徐(おもむろ)に立ち上って、

「よく見ていてくれ給えよ。僕の使う魔術には、種も仕掛もないのだから。」

私はこう言いながら、両手のカフスをまくり上げて、暖炉の中に燃え盛さかっている石炭を、無造作に掌の上へすくい上げました。私を囲んでいた友人たちは、これだけでも、もう荒胆を挫しがれたのでしょう。皆顔を見合せながらうっかり側へ寄って火傷やけどでもしては大変だと、気味悪るそうにしりごみさえし始めるのです。

そこで私の方はいよいよ落着き払って、その掌の上の石炭の火を、しばらく一同の眼の前へつきつけてから、今度はそれを勢いよく寄木細工の床へ撒まき散らしました。その途端です、窓の外に降る雨の音を圧して、もう一つ変った雨の音が俄(にわか)に床の上から起ったのは。と言うのはまっ赤な石炭の火が、私の掌てのひらを離れると同時に、無数の美しい金貨になって、雨のように床の上へこぼれ飛んだからなのです。

友人たちは皆夢でも見ているように、茫然と喝采するのさえも忘れていました。

「まずちょいとこんなものさ。」

私は得意の微笑を浮べながら、静にまた元の椅子に腰を下しました。

青空文庫 芥川龍之介「魔術」

いやー、「私」が調子づいてますねー。作中に石炭が登場しましたが、まほやくミスラならこれを食べたり…はしないか。流石に。石だし。まほやくミスラの好物が消し炭となった由来は、おそらく魔女ベファーナのお話からきていると思われます。ミトラ神とも深く関わってくるので、こちらも是非読んでみて下さい。

雪降る街のプレゼント

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この後、金貨に目がくらんだ友人たちに、金貨を賭けてトランプをしようと誘われます。

「何しろ大した魔術を習ったものだ。石炭の火がすぐに金貨になるのだから。」

「これじゃ一週間とたたない内に、岩崎や三井にも負けないような金満家になってしまうだろう。」などと、口々に私の魔術を褒めそやしました。が、私はやはり椅子によりかかったまま、悠然と葉巻の煙を吐いて、

「いや、僕の魔術というやつは、一旦欲心を起したら、二度と使うことが出来ないのだ。だからこの金貨にしても、君たちが見てしまった上は、すぐにまた元の暖炉の中へ抛ほうりこんでしまおうと思っている。」

友人たちは私の言葉を聞くと、言い合せたように、反対し始めました。これだけの大金を元の石炭にしてしまうのは、もったいない話だと言うのです。が、私はミスラ君に約束した手前もありますから、どうしても暖炉に抛りこむと、剛情に友人たちと争いました。

青空文庫 芥川龍之介「魔術」

まほやくキャラのモチーフとなった物語には、ほぼ「約束」に関するエピソードが描かれています。「魔術」でも約束が描かれましたね。果たして「魔術を使うために欲を捨てる」という約束が果たされるのか。いよいよ物語も佳境です。

「約束」と「王様」と「厄災の傷」

「私」は何度も賭けを断りますが、押し問答に負け、ついにトランプをすることに。

いくら友人たちが躍起となっても、私は一度も負けないばかりか、とうとうしまいには、あの金貨とほぼ同じほどの金高だけ、私の方が勝ってしまったじゃありませんか。するとさっきの人の悪い友人が、まるで、気違いのような勢いで、私の前に、札(ふだ)をつきつけながら、

「さあ、引き給え。僕は僕の財産をすっかり賭ける。地面も、家作も、馬も、自働車も、一つ残らず賭けてしまう。その代り君はあの金貨のほかに、今まで君が勝った金をことごとく賭けるのだ。さあ、引き給え。」

私はこの刹那に欲が出ました。テエブルの上に積んである、山のような金貨ばかりか、折角私が勝った金さえ、今度運悪く負けたが最後、皆相手の友人に取られてしまわなければなりません。

のみならずこの勝負に勝ちさえすれば、私は向うの全財産を一度に手へ入れることが出来るのです。こんな時に使わなければどこに魔術などを教わった、苦心の甲斐があるのでしょう。そう思うと私は矢も楯もたまらなくなって、そっと魔術を使いながら、決闘でもするような勢いで、

「よろしい。まず君から引き給え。」

「九。」

「王様(キング)。」

私は勝ち誇った声を挙げながら、まっ蒼になった相手の眼の前へ、引き当てた札を出して見せました。すると不思議にもその骨牌(かるた)の王様が、まるで魂がはいったように、冠をかぶった頭を擡(もた)げて、ひょいと札ふだの外へ体を出すと、行儀よく剣を持ったまま、にやりと気味の悪い微笑を浮べて、

「御婆サン。御婆サン。御客様ハ御帰リニナルソウダカラ、寝床ノ仕度ハシナクテモ好イヨ。」

と、聞き覚えのある声で言うのです。と思うと、どういう訳か、窓の外に降る雨脚までが、急にまたあの大森の竹藪にしぶくような、寂しいざんざ降ぶりの音を立て始めました。

ふと気がついてあたりを見廻すと、私はまだうす暗い石油ランプの光を浴びながら、まるであの骨牌の王様のような微笑を浮べているミスラ君と、向い合って坐っていたのです。

私が指の間に挟んだ葉巻の灰さえ、やはり落ちずにたまっている所を見ても、私が一月ばかりたったと思ったのは、ほんの二三分の間に見た、だったのに違いありません。けれどもその二三分の短い間に、私がハッサン・カンの魔術の秘法を習う資格のない人間だということは、私自身にもミスラ君にも、明かになってしまったのです。私は恥しそうに頭を下げたまま、しばらくは口もきけませんでした。

「私の魔術を使おうと思ったら、まず欲を捨てなければなりません。あなたはそれだけの修業が出来ていないのです。」

ミスラ君は気の毒そうな眼つきをしながら、縁へ赤く花模様を織り出したテエブル掛の上に肘ひじをついて、静にこう私をたしなめました。

青空文庫 芥川龍之介「魔術」

「私」は欲を捨てられませんでしたね~。まあ、気持ちもわかりますけどね。私が今まで読んできたモチーフ小説で幾度も約束が交わされていきましたが、だいたい約束は破られています。まほやくでは皆、約束を守れるといいですね…。

「私」が欲に負けて魔術を使ったとき、ミスラ君がトランプのキングとなって、カードからうにょっと出てきました。そして微笑みを浮かべながら、赤く花模様を織りだしたテーブル掛けに肘をついて、「私」をたしなめました。

このシーンを彷彿とさせるのが、イベントストーリー「占い師と雪解けのコンチェルト」のSSRミスラです。頭に王冠を載せ、花柄の赤いクッションに肘をかけて微笑む。これはもう、マティラム・ミスラ君なのでは?そうだとしたら、個人的にテンション上がります。

シノとヒースクリフの衣装にも、モチーフ小説「南総里見八犬伝」に所縁のあるマークが使われていたので、もしかしたらミスラのスチルも「魔術」を意識しているのかもしれませんね。シノ&ヒースの考察はこちらをどうぞ!

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「魔術」では、「私」はミスラ君の催眠術によって夢を見させられていました。打って変わって、まほやくミスラは大いなる厄災の傷によって眠る事ができません。この眠れない傷は、ミトラ教のミトラ祭儀書に出てくる「眠らず、つねに目覚めているお方」という一文を意識していると思いましたが、もしかしたら「魔術」のエピソードも意識しているのかもしれませんね。

芥川龍之介と谷崎潤一郎

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谷崎潤一郎

See page for author, Public domain, via Wikimedia Commons

最後に、ここまで度々触れてきた谷崎潤一郎と「魔術」の関係に触れていきます。あんまりまほやくとは関係ないのですが、面白いエピソードなので良ければお付き合いください。

芥川龍之介と谷崎潤一郎は、共に明治末期~昭和初期に活躍した文豪です。小説の筋について熱く論争した「芥川vs谷崎論争」なんてのも後世に語り継がれています。

実は芥川が「魔術」を描く前に、谷崎が「ハッサン・カンの妖術」という小説を発表しています。「ハッサン・カンの妖術」は、主人公である谷崎自身が、インドからやってきた、マティラム・ミスラという男性と友人になり、彼の魔法(神通力)を垣間見る、というお話です。そう、「魔術」とよく似ているんですね。というより、芥川が「ハッサン・カンの妖術」を読み、それをオマージュする形で「魔術」を書き上げたのです。

「魔術」の冒頭ではこう描かれていました。

マティラム・ミスラ君と云えば、もう皆さんの中にも、御存じの方が少くないかも知れません。

私はちょうど一月ばかり以前から、ある友人の紹介でミスラ君と交際していましたが、政治経済の問題などはいろいろ議論したことがあっても…

この「もう皆さんの中にも、御存じの方が少くないかも知れません。」というのは、皆さん、既に谷崎潤一郎の「ハッサン・カンの妖術」を読み、それに登場するマティラム・ミスラ君についてご存知ですよね?と問いかけているのです。面白いですね~。

更に、「ある友人の紹介でミスラ君と交際していましたが」のある友人とは、谷崎潤一郎を指しているのでしょう。ちなみにマティラム・ミスラ君は架空の人物です。芥川は谷崎のキャラクターを拝借して、魔術を書き上げたのです。凄いですね~現代でやったら権利周りで色々と大もめしそうw

「ハッサン・カンの妖術」と「魔術」では、ミスラ君の性格はだいぶ異なります。「魔術」では落ち着きのあるミステリアスな雰囲気をまとっていますが、「ハッサン・カンの妖術」では酒が入ると語りが止まらない、週一で吉原へ通うなど、なかなかの江戸っ子っぷり。「魔術」のほうが、まほやくミスラに近いですね。

また、芥川は「ハッサン・カンの妖術」のミスラ君+ミトラ神話のミトラ神をちょっと意識してミスラ君を書いていますが、谷崎はおそらくミトラ神をモチーフにしていません。彼は、19世紀に実在したインド人、スワミ・バスカラナンダ・サラスワティというヒンドゥー教の聖人をモチーフにしているのでしょう。

スワミの出家前の名前はマティラム・ミスラ。スペルも谷崎の小説に登場する「Matiram Misra」と一致します。(芥川の小説では、ミスラのスペルは書かれていません。)他にもスワミを彷彿とさせるエピソードがありますが、ここでは省略。

ミスラ君のキャラづくりとして、

谷崎:インドの聖人スワミから

芥川:谷崎のミスラ君+ミトラ神から

みたいな感じでモチーフにしていそうですね。「魔術」のほうが、まほやくに関連するエピソードが多かったので、今回はこちらを元ネタとして考察してみました。

ただ、谷崎の「ハッサン・カンの妖術」に面白い設定があって、魔法(神通力)は基本的に、術者本人が行使するのではなく、ジンという魔人の眷属が行使するのです。術者本人は呪文などでジンに命令し、ジンがそれに従います。ジンは従順なだけではなく、たまに怒ったりして命令を雑にこなしたりします。ジンの声を聞くことができるのは、神通力を持つもののみ。なんだかまほやくの精霊っぽい!

まほやくでも、魔法使いによって精霊を従わせ、精霊が魔法を使っています。このあたりの理論は以前考察しているので、こちらも参考にしてみて下さい。

世界考察

まほやく世界にいくつもある不思議なルール。第2部の冒頭では<大いなる厄災>や精霊について触れられ、また1歩世界の秘密へと近づきましたね。今回は第2部2章までのストーリーから、<大いなる厄災>や精霊、そしてマナとは一体何なのか考えていきます[…]

ジン(精霊)に願い事を叶えてもらう、というのはファンタジーでは鉄板ですね。アラジンとか。まほやくが「ハッサン・カンの妖術」をモチーフにしているとは流石に考えてはいませんが、読んでて興奮したので語っちゃいました。ぐへへ。

さいごに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!お楽しみいただけましたか?

今回、「魔術」についてたっぷりご紹介しましたが、今から読んでも面白い小説です。なんと青空文庫で公開されているので、お時間があればぜひ読んでみて下さい。20分くらいで読めると思います。

芥川龍之介 魔術

「ハッサン・カンの妖術」は青空文庫にはありませんが、電子書籍で100円あれば読めます。物語の後半、ヒンドゥー教あたりの話は難しくて私もよくわかりませんでしたが(失礼)、話のオチが面白いので、これは読んでほしい。谷崎っぷりが爆発してますw

それでは、また別の考察でお会いしましょう!

See You!

参考文献

芥川龍之介 魔術

ハッサン・カンの妖術

Swami Bhaskarananda Saraswati – Wikipedia

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