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ネロがブラッドリーの魂を背負う!獄中記ブラック・プリンスが元相棒コンビの根幹を語る!

北の国で盗賊として生きていたブラッドリーとネロ。ふたりはかつて相棒として生きていましたが、後に別々の生き方を選び、そして再会しています。この奇妙な運命のモデルとなった物語とは一体何か?じっくりと考察していきたいと思います。

ここからはネタバレが含まれますのでご注意を!

それでは、レッツゴー♪

ブラック・プリンスについて

今回、考察していくのはアイリス・マードック著の「ブラック・プリンス」という小説です。まほやくに登場する賢者の魔法使いは、有名文学作品をモデルとしてキャラクターが形作られています。名前や根幹の性格、マナエリアなどですね。

ただ、モデルとなる小説全ての設定を反映しているわけではなく、あくまで根幹の設定の一部に反映されているのみ。そこから生まれた物語やキャラクター性はまほやく独自らしさがあります。1が100ではなく、1は1である、という前提でここからの考察もお楽しみいただければ幸いです。

著者 アイリス・マードック

著者アイリス・マードックはイギリスの作家であり、詩人であり、哲学者である女性です。1919年にアイルランドのダブリンに生まれ、幼いころから創作活動にいそしみ、オックスフォード大学で古典学を履修。卒業後は大蔵省で勤務、ベルギーやオーストリアで戦時難民の支援を行っていました。

1954年に処女作「網の中/Under the Net」を発表後、数々の長編小説を出版。本作「ブラック・プリンス/The Black Prince」は1973年に発表された15番目の長編作品となります。

多種多様な愛の在り方について、善や美徳について、人間の自由について、アイリスの小説には彼女の哲学的思想が描かれており、小説の奥深くを覗くと幾つにも解釈ができる芸術作品となっているのです。

概要

ブラック・プリンスのあらすじを読んでいただく前にいくつか。本作は主人公ブラッドリーが一人称視点で書いた自伝小説です。まほやくにはブラッドリーの名前だけではなく、性格や事象がブラッドリーとネロのふたりにオマージュされていると思われます。そのあたりを意識しながらお読みいただけると良いかと。

あらすじ

London | london | Metro Centric | Flickr

ロンドンのアパートに住むブラッドリー・ピアソンは齢58となる作家。作家といっても、実際に発表した作品は数本。つい最近まで税務署で勤務しており、その傍らで作家活動をしていました。決して有名な作家ではなく、本人は「大成する機を待っている」と考えていますが、実際は鳴かず飛ばずの作家なのです。

ブラッドリーは作家活動に注力するために税務署を早期退職。海辺の田舎にしばらく身をおく予定でした。しかし、そんなブラッドリーのもとに1本の電話がかかってきます。

「ブラッドリー、頼むから家まで来てもらえないかな、たった今、女房を殺してしまったらしい。」

ブラッドリーにとって当時最大の友人であるアーノルドからの電話でした。アーノルドはブラッドリーが見出した作家であり、弟子であり、無二の親友なのです。アーノルド宅につくと、アーノルドの妻レイチェルが頭に瘤をつくり、泣きはらした姿でいました。どうやら夫婦喧嘩が発展し、アーノルドがレイチェルを殴ってしまったのです。

レイチェルは言います。本当は自分も職につきたかったが、夫はそれを許さない。夫は女性を奴隷のように扱うと。もし夫が溺れようと焼け死のうと、自分はそれを見ていてやる。今日は泣いて過ごすが、明日はいつものように過ごす。それしかないのだと。

対して夫のアーノルドは、いつものことだと気に留めていません。すぐに機嫌を直すだろうと思い「女房は実にいいやつなんです。とても寛大でとても思いやりがある。」と口にする始末。ブラッドリーは考えます。夫は妻の心を読み取ろうとしたためしがないのだろう、と。

sea | sea | Cuba Gallery | Flickr

それからしばらくして、ブラッドリーは恋に落ちました。相手はなんと、親友アーノルドの娘です。名はジュリアン。年は20歳。ブラッドリーとは38歳も離れている女子大生です。ふたりは駆け落ちし、海辺が近い田舎に移りました。

その時はお互いに真に愛し合っていましたが、とある事件をきっかけにジュリアンはブラッドリーのもとを離れてしまいます。ブラッドリーは錯乱し、精神的にまいってしまいます。ジュリアンはきっと父親に連れていかれ、どこかの部屋に閉じ込められているのだろう。彼女もきっと僕に会いたがっているに違いない、と。

レイチェルはブラッドリーを心配して家を尋ねました。と、そこで夫アーノルドがブラッドリーにあてた手紙を読み、ある事実を知ってしまいます。アーノルドは、不倫をしていたのです。しかも相手はブラッドリーの元妻。

しばらくして、ブラッドリーのもとに1本の電話がかかってきます。かけてきたのはレイチェル。

「おねがい、すぐに来ていただけないかしら」

「丁度これからロンドンを発つところなんだ」

「おねがい、すぐに来ていただけないかしら、とても、急を要することなの」

ブラッドリーがアーノルド宅へ向かうと、そこには頭から血を流したアーノルドが倒れていました。そして涙にくれたレイチェルの姿も。不倫をめぐる口論の末に、レイチェルがアーノルドを火かき棒で殴り、夫を殺してしまったのです。

ブラッドリーはレイチェルに非をかぶせたくないため、凶器である火かき棒を洗うなど、事故に見せかけようとしました。その現場をみた警察は、状況からブラッドリーが犯人であると決めつけます。実際、凶器にレイチェルの指紋はなく、ブラッドリーの指紋のみあるのですから。

prison | Seodaemun Prison in Seoul, south Korea. link : en.w… | Flickr

ブラッドリーは有罪判決をうけ、投獄されました。真実を知っているレイチェルは口を閉ざし、かつての友人たちもブラッドリーが犯人であることを疑いません。ブラッドリーは裏切られたのです。

ブラッドリーは元来の本質を思い出したのでしょうか。自身のこれらの経験を獄中で一冊の本として書き上げました。タイトルはブラック・プリンス。ブラッドリー・ピアソンのイニシャル「B.P」に関連付けて、また、かつて愛しい人と談義をかわした「ハムレット」の主人公の黒装束にかけて、そう名づけたのかもしれません。

ブラッドリーはブラック・プリンスを書き上げた後、獄中で癌のために亡くなったのでした。

オマージュされた内容

と、あらすじを語りましたが、これでもだいぶ内容は省略しています。ここからはまほやくにオマージュされた内容をじっくりみていきましょう!

プロフィール

まず、ブラック・プリンスの主人公であるブラッドリーの特徴から。ブラッドリー・ピアソンは58歳の男性で、白みがかってきたブロンドヘアーに、青灰色の瞳をしています。金と青。どこかでみたキーカラーですね。そう、ネロの瞳と髪色です。

白雪姫をモデルとしているスノウ・ホワイトは黒髪に金の瞳。これは白雪姫の初版で、姫は金髪・黒い瞳であることから、黒と金をキーカラーとしてキャラクタービジュアルが出来上がったのでしょう。キーカラーに関する考察はこちらから。

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同じくネロも、小説ブラッドリーのブロンドヘアーの金と、瞳の青灰色をキーカラーとしてビジュアルが出来上がったと思われます。おや、「ブラッドリー」という名前なのに、ネロのビジュアルだなんで変な話と思われますね。それはこの続きを読んでから。

小説ブラッドリーの性格ですが、真面目で感受性が強く、「あなたって感じやすい人だわね」と言われるくらいストレスを感じやすい人です。誰かに愛されても、自分は無価値であり、その愛情に値しないと考えてしまったりなど。その分文学作品をはじめとした芸術作品に造詣が深く、シェイクスピア作のハムレットについて語ったときは止めても止まらないくらい自身の考えを述べていました。

そして頼られ体質なのか、あらすじには書ききれないほど、周りから色々とお願いをされます。喧嘩の仲裁や、作家の講義、お金を貸してほしいなどetc…。押しに弱いのか、文句を言いながらも何だかんだで引き受けて面倒をみていますね。心が弱っている人にはお茶をくんであげたり、寝かしつけてくれたり。だからお願いが絶えないのかも。

こうしてみると、ネロの性格に似ている部分も多いですね。感受性が強く繊細な部分はまさにそれです。この小説は一人称で描かれていますので、小説ブラッドリーがいかに色んな事をごちゃごちゃと(失礼)考えているかがよくわかります。感受性が強く繊細であるという部分は読者にもよくわかるのです。

また、お願いを無下にできない性格も似ていますね。ネロがお願いをはっきりと断っている姿は想像がつきませんし。ただ、小説ブラッドリーは気が利くわけではなく、基本自分本位な性格なので、そのあたりはまほやくには受け継がれなかった様子。

ここまでみると、小説ブラッドリーはネロのモデルであると考えられます。過去にヒースクリフのモデル小説を考察しようと「嵐が丘」を読んだのですが、それに登場するヒースクリフの容姿や性格は、まさにシノのようでした。名前と性格が逆にオマージュされていたのです。おそらくこのブラック・プリンスにおいても、名前はブラッドリーであるものの、容姿や根本の性格はネロにオマージュされたのでしょう。

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ちなみに、ネロの重要なパーソナリティである「料理人」については、このブラック・プリンスには関連したものはありませんでした。おそらく別のモデル小説があると思われるので、それはまた別の機会に。

マナエリア

ネロのマナエリアは「傾いた日差しで金色に光る麦畑」。めちゃくちゃピンポイントな時間帯・場所ですが、それを連想させる情景がブラック・プリンスでは描かれていました。小説ブラッドリーが恋人と駆け落ちし、車で海辺の家へと向かうシーンです。その道中はこう書かれています。

「いまだに夕陽の光を捉えている大麦畑の上に浮かぶクリーム色の皿のような満月を眺めながら、僕は二つの悩み事を胸に抱いていた。」

ふたりが過ごした家は赤煉瓦の正方形であり、海の砂丘を越え、海を背にすると見えます。家の奥には黄緑色の平地が広がり、遠くに教会が見えます。黄緑色の平地と表現されているあたり、もしかしたら麦畑ではないのかもしれませんが・・・まあ麦畑も時期によっては緑ですし。道中はともかく、家の近くに麦畑があったかは正確にはわかりません。

ロンドンでは周りの厄介ごとに巻き込まれて心休まる暇がありませんでしたが、この海辺では小説ブラッドリーが数日ではありますが、恋人と幸せに過ごせた場所です。それに着想を得て、麦畑がネロのマナエリアになったのかもしれませんね。

・・・と思ったのですが、まほやくネロはこうも言っています。「胸くらいの高さの穂を掻き分けて進むイメージがずっとある」と。こういったシーンはブラック・プリンスでは描写されていませんでしたので、もしかしたら別のモデル小説で描かれているのかもしれません。

弟子のような親友

ここからはキャラのパーソナリティから離れて、小説で起きた事象からオマージュされた内容を見ていきます。小説ブラッドリー以外にも周りには個性的なキャラクターがおり、それぞれのエピソードや関係性があります。それらがまほやくブラッドリーとネロの関係に落とし込まれていそうなのです。

まずは小説ブラッドリーと、親友アーノルドとの関係について。ブラッドリーいわく、ある会合でアーノルドと知り合い、アーノルドが恥ずかしそうに自身の小説について打ち明けてきたそう。ブラッドリーは一応作家としてデビューしていたのと、アーノルドの小説が素晴らしいと感じたため、出版できるように口利きをしたのです。

そして、見事作家デビューしたアーノルドはたちまち成功。ブラッドリーとしては、アーノルドが大成できたのは自分が面倒をみてやったからであり、弟子→親友へと関係が変化していった大切な友人という認識なのです。年が10程ブラッドリーのほうが上なので、それも相まって「自分のおかげで今のアーノルドがいる」という自負があるのです。

このあたりの関係性はまほやくにも反映されていそうですね。盗賊団時代、詳しい経緯は語られていませんが、ブラッドリーが新入りのネロをかわいがっていた描写があります。魔法についてアドバイスしてあげたりと、ブラッドリーいわく「俺がいないとやっていけない。面倒見てやっていた。」とのこと。思いの行き違いとはかくも恐ろしや・・・。

熟年夫婦の大喧嘩

続いてはこちら。アーノルドとその妻レイチェル。物語の冒頭で「妻を殺してしまったようだ」と連絡してきたあの事件ですが、要は長年連れ添った夫婦の盛大なこじれ喧嘩でした。

レイチェルいわく、夫は女性を軽視し威張り散らしている。わたしが職につくことは許さないし、他所の女性に夫婦の痴話を聞かせている。わたしに自由はないけれど、彼女の経験を小説に書かれるものだから、まるで自分の人生をとられているようだと感じていました。

対してアーノルドはレイチェルが慈善事業やら何かの運動をすることは止めていないし、浮気もしていない。小説にも彼女について書いたりなどしていない。そもそも喧嘩など何度もしてきたから、今回もじきに妻は機嫌を直すだろう、とあまり深刻には考えていませんでした。

どちらの言い分が正しいかなどは置いておいて、この長年連れ添ったふたりが不満を爆発させて喧嘩するという構図は、まほやくブラッドリーとネロに反映されていそうですね。ネロは度々危なっかしい行動をし、しかも自分の話を聞かないブラッドリーに嫌気がさして喧嘩。ブラッドリーは何故ネロがそうも怒るのか根本が理解できずに喧嘩。そんな喧嘩喧嘩喧嘩を何度も繰り返してきたわけです。アーノルドとレイチェルのように。

アーノルドとレイチェルは、直接まほやくブラッドリーやネロのモデルとなったキャラクターではありませんが、このブラック・プリンスで起きた事象や関係性を、まほやくにオマージュしたのでしょう。他にもそういったエピソードがあるので、それは追々。

ちなみに、最終的にレイチェルはアーノルドを喧嘩の末殺害してしまったと思われるので、まほやくブラッドリーとネロはそうならないように願いますね。喧嘩はほどほどに・・・。

二度と関わりたくない元妻

小説ブラッドリーは離婚歴があり、現在は独身です。もう女性はこりごりだとばかりに独身生活を楽しんでいましたが、突如元妻のクリスチャンがブラッドリーのもとを訪れます。クリスチャンは別の夫と死別し、ブラッドリーのいるロンドンへ帰ってきたのです。

それを噂で聞いたブラッドリーは、何があっても会いに来るな。絶対に会いに来るな。こっちは君に会いたくない。来るな。来るな来るな。という手紙を送ります。誇張ではなく、かなりキツイ言い回しの長文絶縁状。もし私がもらったら3日寝込むやつ(笑)。しかしクリスチャンはめげすにブラッドリーのもとへ訪れ、よりを戻したいと迫るのでした。

過去の連れと思わぬ再会をする、という点ではまほやくブラッドリーとネロを彷彿としますね。ブラッドリーはまたネロと組みたいが、ネロはご勘弁願いたい状況。なんだかクリスチャンとブラッドリーのよう。

小説ではブラッドリーとクリスチャンがよりを戻すことはありませんでした。が、終盤ではわりと友人に近い良好な関係を築きかけていたようにも見えます。まあ、ある最後の事件によりそれもぶち壊しになるのですが。

裏切られて投獄される

小説における最後の事件。ブラッドリーは親友アーノルドを殺害した罪で投獄されました。ブラッドリーいわく、実際はレイチェルが殺害したものの、彼女は口を閉ざし、自分は有罪になったといいます。レイチェルに裏切られたのです。

まほやくにおいても、ブラッドリーがネロと待ち合わせしていた場所に討伐隊が現れます。待ち合わせ場所にネロが来ずに討伐隊がきたとなれば、必然的にネロが待ち合わせ場所を敵に売ったと考えるのが自然です。事の真相はまだわかっていませんが、現時点では「ブラッドリーは裏切られたのか?」という状態。そしてまほやくブラッドリーは討伐隊に捕まり、投獄されました。ただ、投獄中に賢者の魔法使いに選ばれたため、今は双子の目の届く範囲で自由に行動できているのです。

この「裏切られて投獄された」というエピソードは、まほやくにオマージュされていそうですね。ちなみに、このブラック・プリンスは投獄中にブラッドリーが書き上げた渾身の自伝小説です。まほやくでも獄中でブラッドリーが書いたとされる自伝が世に出回っているそう。本人は、書いてない!とキレてましたが。これもブラック・プリンスを意識したエピソードなのかもしれませんね。

何度も交わし守られない約束

ブラック・プリンスにおいて、主人公のブラッドリーや他のキャラクター達は何度も約束を交わします。昼食の約束、前の家に置いてきた宝石をとってきてほしいという願いを叶える約束、家出娘が「明日は必ず家に帰る」という約束、結婚しようという約束・・・小さなことから大きなことまで実に様々な約束が交わされますが、その殆どが守られることがありませんでした。

この約束について、ブラック・プリンスでは興味深い見解が描かれています。ブラッドリーの有罪を決めるための裁判で、友人はブラッドリーを精神異常者にしたてるためにこう言います。「彼は頻繁に約束を反故にする」と。ここで言う約束は昼食だったりと小さな事柄です。それをきいた検事はこう返します。「とすると、われわれ全員が狂人でしょうか?」

約束は本来守られるべきものですが、それを破ったからといって人間性に異常はない。人としてなんらおかしなことではないと検事は述べているのです。それはそうですね。口約束を破ったからといって、人間性が成っていないなんてことはありません。むしろ、人間なら常にありえることだと。

まほやくでは魔法使い達は「約束」を重んじています。約束を破ると魔法が使えなくなってしまいますから。本来であれば、まほやく世界の「約束」の扱い方のほうが正当なのかもしれません。約束はそんなに軽々しく結ぶものではありませんからね。

けれど、私たち現実世界では、ブラック・プリンスでの「約束」の扱い方のほうが身近に感じる人も多いのではないでしょうか。語弊を恐れずに言えば、現実に生きている人間が、みんな物語の登場人物のように誠実に生きられるわけがないのですから。いわば、まほやく世界の「約束」は、叶うことのない雲の上の理想のようなものです。

だからこそ、まほやくではおとぎ話に負けない、うんと理想を叶える物語を描いてほしい。まほやくを読んでいる間だけは雲の上に連れて行ってほしい、と個人的には思います。だいぶ話がそれましたね。

ブラック・プリンスでも「約束」というキーワードは少し印象的に描かれていました。今まで読んだ他のキャラクターのモデル小説でも「約束」というキーワードが出てきたと思うので、いずれそれらにも触れたいですね。

鬼百合

Tiger Lily. | Lilium (members of which are true lilies) is a… | Flickr

最後に、ブラック・プリンスに登場したちょっと気になるアイテムたちをご紹介します。チェックチェック~♪

まずは鬼百合から。小説ブラッドリーが住んでいる部屋には、鬼百合の意匠をあしらった椅子があります。鬼百合は別名、天蓋百合やタイガーリリーと呼ばれ、日本にも自生している花です。花言葉は様々あります。愉快、純潔、富と誇り、そして賢者など。

まほやくでは賢者の魔法使いに黒百合の紋章が浮かびます。それや花言葉も相まって、百合はなんだかまほやくと縁がある花ですね。過去に百合についても考察しているので、お時間があればそちらもどうぞ。

まほやく×聖書

まほやく世界に燦然と輝く月。月に選ばれた魔法使いは「賢者の魔法使い」と呼ばれ、年に一度大いなる厄災と戦うことが定められている。そして、魔法使いは約束を破ると不思議の力を失い、ただの人間となる・・・。この摩訶不思議な世界の理。これら[…]

ちなみに小説では、ブラッドリーは親友アーノルドの娘・ジュリアンに恋をします。その娘が座っていた鬼百合の意匠が施された椅子を、愛おしそうに抱きしめるシーンがあります。恋を自覚し、浮かれポンチになっているシーンですね。だいぶ浮かれポンチ君になているので、ぜひご一読をw。

賢者

鬼百合の花言葉でもあり、まほやくでも重要なキーワード「賢者」。賢者についても興味深く論じられているのでご紹介しますね。これはブラッドリーが恋を自覚して浮かれながらも、いつもの自分でいようと心に言い聞かせるシーンです。決して「すぐ会おう!」など、ジュリアンに催促するようなみっともない真似はしないぞ、と決意する感じ。その文章がこちら。

「聖人のように、一切を剥奪された貴重な時間を冥想に捧げよう。かくして世界は、同一であってしかも異なるものとなるだろう。ちょうど賢者にとって世界がそうであるのと同じように。ーーー賢者は山奥から帰って普通と変わらぬ生活をしながら、それでもなお洞察力に富む目により、農民にも似た、税務調査官にも似た神の目によって、一切のものを見抜いているのである。かくして世界は救われるのであろう。」

要は欲に負けずに、賢者のように洞察しよう。冥想することでよく似た別世界にいけば、心が落ち着くだろう・・・言葉を平たく伸ばして薄くした場合はこんな感じの意味合いになるのではないかと。

しかし、鬼百合にあわせて賢者について論じているあたり、作者も意図してこのシーンを描いているのでしょう。まほやくにも通じる深い意味合いがあるかも?ないかも?確かここの他にも賢者について論じているシーンがあったので、ぜひご自身でも読んでみて下さいね。

手紙

最後に手紙について。小説ブラッドリーは、何か大切な用事があるときは、電話よりも手紙を書くようにしています。これは彼なりに固定観念があるため。いわく、

「手紙には不思議な力があるものと考えているからだろう。しばしば僕は不合理にもこんなことを感じるのだが、何かを手紙で要望すれば、もうそれが成就したも同然なのである。」

たしかに手紙でお願い事をされると、なんだか重みがでて叶えてあげたくなりますものね。小説ブラッドリーは、作中で何通もの手紙を書いています。そのエピソードを反映してか、まほやくでリケは手紙でネロにオムレツを所望しています。手紙だと願いを聞き入れてくれそうだから、と。

これはもう叶えてあげるしかないでしょう。わたしもネロに手紙で豪華なフルコースをおねだりしたい・・・。

さいごに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!お楽しみいただけましたか?

今回、ブラック・プリンスのあらすじをご紹介しましたが、この作品の面白いところは物語の展開もさることながら、ブラッドリーの繊細な心中描写だと感じています。ところどころの引用を読んでいただくとわかると思いますが、だいぶ凝りに凝った言い回しが多いですよね。そして詳細。はじめは少し堅苦しく感じますが、日本人が読みやすい文脈で翻訳されているので、思ったよりすらすらと読めると思います。読んでいくにつれてブラッドリーをどんどん身近に感じていく感覚が面白いので、ぜひご一読を。

また、今回ご紹介したあらすじの話の後に、さらにどんでん返しがあります。それを知ってから再度はじめから読むと面白そうなので、わたしはこれから二週目にいってきまーす。

そういえば、小説の中でブラッドリーは大して親しくない人に「ブラッド」と愛称で呼ばれるのを嫌っていました。まほやくでネロは「ブラッド」と愛称で呼んでいますので、このあたりもオマージュされた内容なのかも?

ただ、考察するうえでどギツイ一文がありまして。「小説を読むうえで、どこにもかしこにも自分の姿を読み取るもの。自分が嗅ぎつけたと勘違いしてしまう。」という文があるんですね。

まほやくと関係あるんじゃないかな?と思いながら読んでいると、実際は関係ないことでもそうだと思い込んでしまう。そんな事も過去あったんじゃないかなーと感じ、腹にストレートパンチをくらった気分になりました。考察は楽しいけれど難しいですね。

ここまでおつきあいいただき、ありがとうございました!

それでは、また!

参考文献

ブラック・プリンス – アイリス・マードック著(講談社)

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