まほやくにはメインストーリーとは別に、数多くのイベントストーリーが描かれています。今回は西と中央の魔法使いが活躍した「夢抱く飛行士のバラッド」を振り返りながら考察していこうと思います。
イベスト舞台の原案となった場所や、描かれたキャラクターの心情変化とは?
ここからはネタバレが含まれますのでご注意を!
それでは、レッツゴー♪
あらすじ
ある日、中央の国で起きた異変。雲間から何かが覗き、激しく光った瞬間、辺境の森のあたり一面が焼き尽くされた。そして空には西の国の紋章が入っていた、大きな影があった。
その報告を聞いた賢者のもとに、西の国からきた機関士、ベンジャミンが相談に駆けつけた。西の国、ラングレヌス島から、飛行軍艦が突如として消え去ったという。もしかしたら中央の国を焼き払ったのは、その飛行軍艦かもしれない。事態の究明のため、賢者一行はラングレヌス島へと向かうのだった。
ラングレヌス島と月のクレーター
ここからは、イベストで登場したキーワードの原案を考察していきます。まずは物語の舞台から。
このイベストの舞台となったラングレヌスは、私たちの世界からオマージュされています。それは、空に浮かぶ月。月のクレーターの名前なのです。
ほぼ満月のおともに月の地名をどうぞ pic.twitter.com/zOFHIlsV7N
— 荒木健太郎 (@arakencloud) November 22, 2018
まほやく世界の地名は、月の地名から由来がきている事が多く、実はまほやく世界は月を反転させた世界である、なんて考察もされていますね。それについてはそのうち詳しく考察してみようと思います。
話は戻って、このラングレヌスは月の東に位置する「豊かの海」の近くにあるクレーター名です。天文学者であるミヒャエル・ラングレンの名にちなんで命名されました。「豊かの海」はラスティカの育成スポット「豊かの街」の由来名でしょう。
この現実世界の各地のスポットの場所も、まほやく世界ではそのまま反転させたような位置にありますので、気になる人は見比べてみてください。
つまり、まほやくに出てくるこのラングレヌス島は、豊かの町の近くに位置していそうですね。
ベンジャミン・フランクリン
モデルとなった人物は誰?
賢者に相談しに来た、西の国の機関士、ベンジャミン。彼の原案となったであろう人物にも少し触れてみようと思います。原案である確証はないのであしからず。ベンジャミンといえば、植物やら海賊やら色々と候補がありますが、今回注目してみるのは政治家であり、気象学者である「ベンジャミン・フランクリン」。

写真提供:Benjamin Franklin – bust x | Benjamin Franklin. Painting (bu… | Flickr
彼は1706年にアメリカ・ボストンで生まれ、印刷業を経て、政治家として活躍。アメリカの独立戦争等、独立の立役者として活躍しました。現在のアメリカ紙幣にも肖像画が描かれていますね。
凧の実験と飛行軍艦
ベンジャミンは科学や発明に興味があり、独学で様々な実験を行っていました。そのひとつに、凧の実験があります。
風で空を飛ぶ、長い紐のついたあの凧を雷の日に揚げ、凧の紐をライデン瓶という電気を貯められる瓶に繋ぎます。これで、雷が凧にあたり、瓶に電気が溜まれば、雷は電気であることの証明になるのです。
この実験により、雷=電気である事が証明され、避雷針が開発される足がかりとなったのです。
念のため言っておきますが、この実験は極めて危険で、命を落とした人もいます。ベンジャミンが死ななかったのは運が良かっただけとも言われるほど。ぜっっったいに真似しないように。特にムル。
さて、この「凧を揚げて雷を集める」というエピソードから彷彿とされるのが、まほやくのベンジャミンが、自身が作り上げた飛行船を、オズの雷で墜とされるというエピソードです。浮遊物に雷が当たるところが似ていますね。いや、まあ似ているのそこだけといえば、そこだけなんですけどね笑。

現実世界のベンジャミンは見事実験を成功させ、落雷から守る避雷針を作り上げました。まほやくでは船は雷で木っ端微塵にされましたが、ベンジャミンは魔法使いに対する偏見が薄れたりと、他に得るものがあったようです。
もしかしたら、技術が発展すれば、オズの雷をものともしない装置がいつか生み出されるかも?いつかベンジャミンが再登場することがあれば面白いですね。
世界情勢
各国の状況
ここからはイベストで描かれたエピソードから、まほやく世界について深掘りしていきたいと思います。まずは世界情勢から。
たまに、まほやくで世界情勢について触れられることがありますが、このイベストではより色濃く描かれていますね。では、具体的にはどのような事柄が描かれているのか。
西の国は魔法科学によって急速に発展し、有頂天状態。しかし、魔法科学の動力源ではマナ石。マナ石は魔法生物が死んだときに生成されるため、資源に限りがあります。西の国としては、よその国に手をかけ、領土を広げたいと考えている様子。

そのため、中央の国としては戦争のきっかけを与えたくはないのです。アーサーもラングレヌス島に調査にいくために、機関士のふりをして潜入することになります。このあたりは、まほやくにしては随分と生々しい世界情勢が描かれていますね。
また、ラングレヌス島に到着したアーサーとカインは、西の国の技術力に危機感を現しています。一国の中心を担っているともいえるふたりが、危機感を募らせるほど。つまり、中央の国は、西の国の軍事力を殆ど把握できていない事がわかります。

軍事力について
では、実際のところ、もし西の国と中央の国が争いになった場合、軍事力はどちらに軍配があがるのか。ここまでの情報のみだと、あきらかに西の国が有利そうです。両国の主戦力はこんなところでしょうか。
西の国 :魔法科学兵器
中央の国:騎士団・魔法科学兵団(最近発足。ニコラスが元団長。)
基本的に中央の国の主戦力は騎士になりそうですが、騎士は魔法使いではなく人間。とても魔法科学兵器に太刀打ちできるとは思いません。カインが魔法使いであることが露見し、騎士団長を失脚したところをみると、国に使えている魔法使いもいなさそうです。
オズの立ち位置
ただ、中央の国には世界最強の魔法使い・オズがいます。カインはオズがいて心強いと思っているようですが、オズ自身は中央の国がどうなろうと知ったことではなさそう。


しかし、今回のイベストでも、「アーサーが悲しむだろう」という理由で、飛行軍艦からの攻撃からラングレヌス島を守っています。中央の国が侵略されたら、悲しむどころの話ではなく、アーサーの身の危険もありますから、いざとなったら、おそらくオズも出張ってくるでしょう。
ただ、飛行軍艦の一撃を受けたオズは、自身の杖が震えた事に顔意を変えています。これは、後に魔法科学兵器がオズの力に匹敵する可能性を示唆しているともとれます。今回は一隻のみからの攻撃でしたが、もし複数の軍艦から一斉に攻撃を受けたらどうなるのか。

また、戦場が1カ所であれば、中央の国はオズの力を存分に振るえますが、戦場がバラバラであれば、オズが分身できるわけでもありませんから、人間が主戦力である中央の国が、到底、魔法科学兵器に太刀打ちできるとは考えられません。
中央の国としては、とにかく戦争を避けることに徹する他なさそうですが、果たしてどうなるのやら。世界の軍事力について考えさせられるエピソードでした。
生み出したものへの責任
今回のイベストでテーマとなった、「役目・責任」。ムルが生み出した魔法科学、ベンジャミンが生み出した大砲付きの飛行軍艦、ただの飛行船ならともかく、どちらも人の手には行き過ぎたものであり、とても手に負える代物ではありません。

使う者にも責任があるのは当然ですが、作る側も後の事を考えて、責任を負う必要がある、ということをシャイロックは話しています。ラスティカも、人間が演奏できない、魔法を用いないと演奏できない超高技術が求められる楽譜を自分が書いてしまったがために、ひとりの人間から音楽家人生を奪ってしまったことを後悔しています。
対して、ムルは自分が生み出した魔法科学に責任を持とうとはしません。何故なら、空飛ぶ船は夢があるから。


この役目・責任については各々が考えを述べるに留まり、これが正しい!とはまほやくは訴えてはいません。おそらく、この先も答えを出すことはしないでしょう。読者に対しても、自分で考えてみて欲しいのだと思います。
少しだけ真面目モードになって、現実世界に置き換えて考えてみましょうか。技術の発展により、石油をエネルギーとして車や飛行機が誕生しました。移動手段の発展により、交易は盛んになり、暮らしが豊かになりました。人々が夢にまでみた空の旅ができるようになりました。
そして、車や飛行機の技術により、戦車や爆撃機が誕生しました。原料の石油には限りがあります。これら、車と飛行機の発明者がムルだとします。世界を豊かにし、夢を叶え、戦争の道具を生み出し、限りある資源を枯渇させるにいたったムルに、「責任をもて」と、あなたは言いますか?
シャイロックはムルを作り変えたのか
シャイロックの葛藤エピソード
飛行軍艦の攻撃からシャイロックを守ったムル。攻撃を間一髪のところでかわしたところは、個人的にまほやくTOP3に入る胸熱シーンです。いや、振り返れば胸熱シーンは沢山あるので、都度ランキングは変わりそうですけども。
シャイロックいわく、魂が砕ける前のムルは決してシャイロックを命がけで助けようとはしない男だったそう。しかし、シャイロックが育てた今のムルは、自分でもよくわかっていませんが反射的にシャイロックを助けだしました。
シャイロックの美学として、ありのままを愛し、相手を支配したくない、という考えがある様子。しかし、この天真爛漫なムルは、もしかしたら自分が思い通りに作り変えてしまったのではないか、と案じているんですね。


ちなみに、西の祝祭ストーリーでも魂のかけらのムルが「君好みに育てたな」と言っているのをみると、はたから見たらシャイロックが作り変えたようなものなのでしょう。そして、様々なストーリーで触れられているところを見ると、第二部以降でも、この作り変え問題はテーマになりそうですね。
ムルは作り変えられたのか?
では、シャイロックは本当にムルを作り変えてしまったのか。考えてみましたが、個人的にはNOではないかと思います。
西の祝祭イベントにて、魂のかけらのムルはシャイロックの店を守るために、本体のムルと同化することを選びました。魂のかけらは、本体から離れているときは個々の意思を持っていますから、別個体と呼んでもいいほど。実際に、賢者に「魂のかけらにも人権はあるのか?」と質問しているくらいですから。


それが、本体と同化するということは、個の存在を投げうつ、つまり身を挺していることと、ほぼ同義です。そして、魂のかけらのムルは、天真爛漫の前身であり、シャイロックが育てる前のムル。
つまり、シャイロックが育てる前だろうと後だろうと、ムルはシャイロックのことを身を挺して守るくらい、大切に思っているのではないか、というのが個人の見解です。シャイロックが育てたあとでも、根幹は変わっていないという事ですね。
将来、ふたりがお互いに「友達だよね~☆」と素直に言い合える関係になるといいのですが…第二部以降に期待。
ラスティカの実力
最後に、ラスティカの実力について軽く触れておきます。このイベストが描かれるまで、正直ラスティカは魔力がそんなに強くなく、また争いからも遠い存在として読者に見られていました。が、イベスト中にラスティカは飛行軍艦の中枢装置を破壊します。
急に乱暴な面を見せられた読者はてんやわんやし、当時はラスティカが随分と話題になったことを記憶しています。このイベストだけでは魔力の強さは測れませんが、ラスティカがいざという時は思い切った行動をとる人物だということがわかりました。


もしかしたらラスティカは、戦闘経験が豊富なのかもしれませんね。年齢的に言えばラスティカは約400歳。ファウストやレノックスが戦い、世界各地で戦乱が起きていたのも約400年前。一応、ぎりぎり革命時代を生きてはいそう。
革命時代は、ファウスト達の戦場である中央の国以外にも各国で争いが起きていた様子。そのなかでラスティカも戦いに赴いていたのかも?このあたりは、また別の機会に詳しく考察してみたいですね。
さいごに
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!お楽しみいただけましたか?
まほやくは、イベストといえど、メインストーリー並みに深い内容が描かれたりするので、毎回目が離せませんね!
この飛行士のバラッドはお気に入りの話なので、いつかフルボイス化しないかなーと期待してたり。骨太なシリアスシーンも気になりますが、中央の魔法使い達がハンドベルを鳴らしまくるシーンも気になったり。「やっほー」の台詞、ボイス欲しくないですか?笑
それでは、また!
参考文献
Langrenus (crater) – Wikipedia
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