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リケの”結婚の約束”は守られるか?「巻き毛のリケ」を更に履修しよう!【元ネタ考察後編】

まほやくに登場するキャラクター達は、文学作品を元に設定が作られています。今回はリケのモチーフ、もとい元ネタである「巻き毛のリケ」を考察していきます!

巻き毛のリケの考察も後編!前回は名前の由来や、紋章の位置についてなど、リケのパーソナルに関する考察をしていきました。

巻き毛のリケ前編

まほやくに登場する賢者の魔法使いたちは、文学作品をモチーフにしています。今回はリケのモチーフ、もとい元ネタであろう「巻き毛のリケ」を考察していきます。フランスの詩人、シャルル・ペローによって書かれたこの童話は、古くから人々に愛され[…]

今回は「巻き毛のリケ」のストーリーから、リケの性格など、内面に関する考察をしていきたいと思います。

ここからはネタバレが含まれますのでご注意を!

それでは、レッツゴー♪

あらすじ

Riquet, à la houppe (BM 1928,0713.188)

詳しいあらすじは前回の考察を読んでいただきたいのですが、ここで超ざっくりとした「巻き毛のリケ」のあらすじを。

むかしむかし、リケという名の王子が生まれました。リケはとても醜い容姿でしたが、とても賢い王子です。そして、愛する人に賢さを与えることができる力があります。

お隣の国には、とても美しいお姫様が生まれました。お姫様はとても美しいのですが、とても愚かです。そして、愛する人に美しさを与える力があります。

森でリケと出会ったお姫様は、1年後にリケと結婚すると約束し、リケの愛の力で賢さを得ます。しかし、1年後。お姫様は結婚の約束を忘れていたのです。

お姫様は約束を反故にしようとしますが、何やかんやひと悶着あり、リケ王子とお姫様は結婚し、幸せに暮らすのでした。めでたしめでたし。

リケの世間知らずさ

まず着目してみるのは、まほやくリケがあまり世間について知らないことについて。リケはずっと教団で隔離されて育ったため、世間についてよく知りません。

賢者:生活のことはとてもしっかりしてるけど、知らないことや思い込みも多いかもしれません。

スポットエピソード より

ミチル:でも、小さな子が学校に行かなくても知っていることを知らなかったり、ちょっと我儘な弟みたいな時もあります。

スポットエピソードより

そんなリケの性質のモチーフになっていそうなのが、童話に登場するお姫様です。他のキャラクターの元ネタでもそうですが、”童話のリケ→まほやくリケ”といった具合に、そのままモチーフになっているのではなく、”巻き毛のリケ→まほやくリケ”といった具合に、物語全体がモチーフになっていることが多いです。

童話のお姫様は、美しい代わりにとても愚かでした。何をきかれても見当違いな返答しかできず、水を飲むときも半分はこぼしてしまうなど。

ただ、このエピソードをそのまま、まほやくキャラに反映させるのは難しいですね。そのため、”世間知らず”という形に変換されて、反映されたのかなと感じました。

ちなみに童話のリケ王子は、とても賢い人格者です。紳士的で理にかなった発言が多く、まさにパーフェクトヒューマン。世間知らずで、ちょっと子どもっぽいリケとは、反対の性格と言ってもいいかもしれませんね。

姫の詭弁と宝剣のエチュード

この童話に登場するお姫様を、まさに彷彿とさせるエピソードが、まほやくに登場します。それがイベントストーリー「神聖なる宝剣のエチュード」。まずは宝剣のエピソードからみていきましょう。

宝剣カレトヴルッフを、聖堂から城へ移そうとするアーサー達でしたが、司祭長に反対されて難航してしまいます。そこで聖堂に直接忍び込んだ賢者一行は、司祭長とバッタリ遭遇。亡霊たちも現れ、場が混乱していきます。その時のエピソードがこちら。

司祭長:神聖な聖堂に、忍び込むとは、なんたる不実な…!

リケ:たしかに、僕たちのしたことは正しくない行いです。ですが、ここまで僕たちを追いつめたのは…あなたの罪です!チェーリオ司祭長!

司祭長:なっ…。

リケ:ですが、許します!

司祭長:…!?

リケ:僕の寛大な心で許します。僕は人々を救いに導く、神の使徒なので。あなたも聖ファウスト聖堂の司祭長なら寛大な心をもって、僕たちを許すべきです!

カイン:…すごい理屈だな…。

すごい理屈ですよね。この後、司祭長からは「詭弁だ!」と言われますが、なんだかんだリケが筋を通して説得し、無事に宝剣は城に収められることになりました。リケ凄い。

リケの理屈としては、僕たちも悪いことをしたけど、あなたも司祭長なら寛大な心で許しなさいね。という事ですね。パワー理論。

このエピソードのモチーフになっていそうなのが、童話の結婚破断ひと悶着騒動です。

お姫様はリケと1年後に結婚すると約束したのですが、実際に1年後になると、お姫様は約束をすっかり忘れていたのです。しかも、頭のいいイケメンが結婚候補として現れていたので、そちらに心を奪われていました。

そんな時に森でリケと遭遇し、「やっぱり結婚できない!」と行った時の姫の台詞がこちら。

もし相手が、がさつで頭のわるい人だったとしたら、わたくしも、困ってしまったにちがいありません。そんな男でしたら、王女は約束を守らねばならぬ、おれと結婚するほかはない、なぜならあんたはおれにそう約束したんだから、とこう言うでしょう。でも、いまわたくしとお話ししているお方は、世界でいちばん賢いひとですもの、きっと、わたくしの気持ちをわかって下さいますわよね。

こちらもパワー理論ですね笑。お姫様の言い分としては、確かに自分は約束を守らずに結婚を破談にしようとしている。しかし、あなたはとても賢いのですから、寛大な心で許して下さいますよね。という事ですね。さっきまほやくリケも同じような事を言っていましたね。

ちなみに、童話ではお姫様の詭弁は通らず、リケ王子が論破して結婚することになります。まほやくではリケの詭弁がそのまま突破していましたね。どちらもリケは強い。

童話では、ほぼ100%お姫様に罪がありましたが、まほやくでは司祭長に(一応)罪がある形でした。そのため、ひと悶着の結果も変わったのかもしれませんね。

結婚の約束

今までいくつか元ネタを考察してきましたが、殆どの作品で”約束”というキーワードが出てきました。ヴェニスの商人ではシャイロックとアントニオが心臓の肉一ポンドを賭けて契約をする、南総里見八犬伝では姫と犬が結婚の約束をするなど。しかし、殆どの作品では約束は守られない、もしくは反故になりかけます。

今回の「巻き毛のリケ」でも、姫はリケ王子と結婚の約束をしますが、それを反故にしようとします。結果的に二人は結婚したので、約束は果たされた・・・のか?

いつか元ネタ達の”約束エピソード”なんかもまとめてみたいですね。

巻き毛のリケの成り立ち

最後に、リケに関する考察ではないのですが、この「巻き毛のリケ」がどのようにできたのか、そしてちょっと面白いエピソードをご紹介します。

著者 シャルル・ペロー

Portrait de Charles Perrault par Charles Le Brun (détail)

著者はシャルル・ペロー。彼は1628年に裁判官の息子としてパリに生まれました。若い時から文才を発揮していましたが、法律を学んで官職につきます。

後にフランスの王立アカデミー(学術研究団体)に選出されます。このアカデミーは定員が40人であり、選ばれた人物のみで構成される名誉です。実は現代でも続いており、著名な作家達が名を連ねています。気になる方は”アカデミー・フランセーズ”で調べてみてね。

ペローは1697年に「過ぎた昔の物語り、またはお話集・教訓付き」という物語集を発表。いわゆる「ペロー童話集」と呼ばれるものですね。

これはペローが作り出した物語というより、親が子へ、語り部が民衆に伝えた”民話”や”説話”を、子どもが読みやすいように編集した物語集です。そのひとつが「巻き毛のリケ」なんですね。

グリム童話

Jacob und Wilhelm Grimm

このおよそ100年後に、グリム兄弟によって発表されたのが「グリム童話」です。白雪姫やシンデレラなどが収録された物語集ですね。これも同じように民話を集めたものになりますが、ペロー童話集に収録されていたお話と、同じ題材の物語も収録されています。(長靴をはいた猫など)

グリム童話の序文では、ペロー童話の簡潔さや正確さを賞賛し、ペロー童話の類話の多くを、自分たちの童話集に取り入れたことを記載しています。こうして民話が現代へと語り継がれてきたと思うと感慨深いですね。

内親王への献辞

「ペロー童話集」には著者名が印刷されておらず、代わりに巻頭に、内親王さまへの献辞と「賤しく従順なしもべ、P・ダルマンクール」と署名されています。つまり、ダルマンクールが王家のご令嬢に、この童話集を献上したんですね。

ダルマンクールとはペローの息子です。このエピソードから、ペロー童話集は、実は息子が書いたものであり、ペローが手を入れたものではないか?という説もあるのです。

献辞の内容を一部抜粋するとこんな感じ。

これらの物語には、すごくまともな〈教訓〉が含まれていて、その〈教訓〉がどのくらい読みとれるかは、物語を読む人たちの賢さの度合いによるのです。

とりわけ身分の低い庶民の家庭で起こるできごとを描き出しており、何とか子どもたちを教育しようという性急な意図のために、無分別なお話と見えたりもしますが、それは、まだ分別を持っていない子どもたちに、話を合わせてやるためなのです。

民衆がどのように生きているかを知るということは、民衆を導いてやるようにと神により運命づけられている、内親王さまのような人たちにこそ、いちばん必要なのではないでしょうか?

相手に失礼が無いようにヨイショしながら、読者の賢さの度合いによって物語りから読み取れる内容も異なりますよ~内親王様にこそ民衆の物語りを知って欲しいのです!と主張しているんですね。

巻き毛のリケの教訓

さて、ここまでに”教訓”という言葉が何度か出てきましたが、実は物語の最後に、実際に教訓が書かれているのです。巻き毛のリケの最後に書かれている教訓はこちら。

教訓

この物語にあることはただの作り話というより、真実そのもの。愛すれば相手の何もかも美しく、愛すれば相手はすべて賢い。

もう一つの教訓

「自然」が与える顔立ちの美しさや生き生きした顔色の新鮮さは「芸術」の及ぶところではないけれど、そういう贈り物よりも、「愛」のおかげで見つけ出す目に見えぬ魅力のほうがずっと、ひとの心をとらえる力をもっている。

巻き毛のリケの最後では、醜い容姿のリケ王子が、相手を美しくする力を持った姫と結婚したことにより美青年になった・・・というお話だと、ここまではご紹介してきました。しかし、実は物語のラストでは、こう描かれています。

巻き毛のリケは、王女の目にはこの世でいちばんの美青年、姿かたちも気だても、姫の知るかぎりいちばんすてきな王子さまに見えたのでした。

これはべつに、妖精の魔法のせいではないと言う人もいます。愛の力が、こんな変化を起こさせたのだ、と。

王女は、恋人の忍耐づよさ、つつましさなど、その魂や心の長所のすべてをよくよく理解したおかげで、その身体のぶかっこうなことや顔立ちのみにくさなどは全然目に入らなくなり、背中のこぶは、大きな背中をした人のかっこよさとしか思われず、それまでひどく足を引きずってらっしゃると思っていたのは、いまは、ちょっとうつむきがちに歩かれるのがとてもすてき!としか思えなくなったのだ、と。

これは巻き毛のリケにおいて、ペローが伝えたい最大のテーマであり、物語の核心です。もしかしたら、まほやくでもこのテーマをモチーフにされることがあるかもしれませんね。

さいごに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!いかがでしたか?

今回、リケを考察するにあたり、過去のまほやくストーリーを読み返していたのですが、読めば読むほど純粋なリケが可愛くてですねえ。美味しいものを沢山食べさせてあげたくなりました。

特に好きなシーンがこちら。

世界最強の魔法使いが形無しですね。リケ最強。これからもリケの活躍を楽しみにしたいと思います!

それではまた次の考察でお会いしましょう!

See You!

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参考文献

ペロー童話集 – 岩波書店

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