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犬塚信乃がまほやくとリンクする!シノとヒースクリフのルーツを追え!【元ネタ考察・後編】

まほやくに登場する賢者の魔法使いたちは、有名文学作品をモチーフにして形作られています。今回はシノ&ヒースクリフのモチーフであろう「南総里見八犬伝」との関係を考察していきます。

南総里見八犬伝の考察は前編後編にわかれており、前回は「八房と伏姫」にスポットをあてて考察しました。この記事は後編。「犬塚信乃」にスポットをあてて考察していきます。もしお時間があれば前編も読んでみて下さいね。

それでは、考察の旅にレッツゴー♪

前回までのあらすじ

写真提供:Dai Nihon Rokujo-yo Shu no Uchi (BM 1973,0723,0.26 16) – 南総里見八犬伝の登場人物 – Wikipedia

前回までの八犬伝のストーリーを忘れちゃったYO!というそこのあなたに簡単にあらすじを。時は15世紀半ばの東国(千葉県とか茨城県あたり)のお話。

安房の国(千葉県の南あたり)を治めている里見家に、伏姫(ふせひめ)という見目麗しいお姫様がいました。里見家は隣の領主に攻め込まれてピンチに。そこで伏姫の父である領主は、冗談交じりに飼い犬の八房(やつふさ)に言います。

「敵の領主を討てば、恩賞として伏姫の婿にしよう。」

八房は伏姫のことが大好きでしたから、約束通り敵の領主の首をとってきます。それに里見の領主は「いやいや、嫁にはやらんぞ!」と約束を守りません。そこで伏姫は「口に出した以上は約束やぶらんといてお父さま!私、八房と結婚します!」といって、八房と山に籠ったのです。

それを見かねた里見家の家来が、八房を仕留めようと山にやってきて、銃を放ちます。しかし、銃弾は目標を逸れ、伏姫にも当たろうとしていました。八房は伏姫をかばい銃弾に倒れ、しかしもう一発も伏姫に当たってしまったのです。

そしてなんやかんやあって伏姫の体から8つの珠が飛び出し、四方へ散り散りとなり、伏姫と八房はここで亡くなってしまったのでした。…というのが前回までのお話。このエピソードにシノやヒースクリフ、そしてイベスト「花咲く森に真実の愛を」などが関わっていたのです。

では、このお話の続きを辿りながら、まほやくとの関係を考察していきましょう!

最初らへんは色濃くまほやくと関係しているわけではないのですが、そもそも「犬塚信乃」の生い立ちを良く知らない方も多いと思いますので、誕生~八犬士として活躍するまでのあらすじもご紹介しますね。

犬塚信乃の誕生

伏姫と八房が亡くなってから1年後、大塚(鎌倉のちょっと上あたりの地)に、ある夫婦がいました。夫の名は犬塚番作(いぬづかばんさく)、妻は手束(たつか)といいます。番作と手束の間には幾度か子どもができましたが、いずれも大きく育つ前に亡くなっていました。

もう子どもを望めない年齢にも差し掛かってきていたので、手束は子宝に恵まれるよう、毎日弁才天にお参りすることにしました。1年ほどお参りし続けたある日、道中で背は黒く、腹は白い、かわいい子犬を見つけました。なついてくるので抱き上げようとしたとき、何か光るものを感じて、手束は南のほうを仰ぎ見ます。

そこには2つの人影がありました。ひとつは美しいひとりの姫、もうひとつは黒白まだら模様の老犬です。姫は手束に1つの珠を差し出します。それを受け取ろうと、手束は手を伸ばしますが、珠は零れ落ち、先ほどのかわいい子犬の足元で消えてなくなってしまいました。

ああどうしようと手束は珠を探しましたがどこにもなく、姫と老犬も跡形もなく消えていました。しかたなく手束は子犬を家に連れ帰り、事の次第を夫の番作に話したところ、

「聞けばその子犬の足もとに珠がころがったというではないか、そなたが子犬を連れ帰ったからは、子宝の念願成就は疑いない。」

というので、子犬を飼うことにしました。そして番作の言葉の通り、手束はまもなく身重となり、ひとりの男の子を出産しました。その子は犬塚信乃と名づけられ、後に八犬士のひとりとして名高い士(さむらい)となったのです。

屋根の上で戦う犬塚信乃

写真提供:Inuzuka Shino – 南総里見八犬伝の登場人物 – Wikipedia

神になった伏姫と八房

ここで一旦あらすじを止めて、ちょっと解説を。手束の前に現れた姫と老犬ですが、これは亡くなった後、神となって現れた伏姫と八房のこと。亡くなる前はわりとバチバチしてましたが、後にちゃんと和解して仲良くなったのかもしれませんね。

伏姫と八房はこのエピソード以外にも、ちょくちょく八犬士達の前に現れて手助けをしてくれます。ある意味、八犬士は伏姫と八房の子どものようなものなのです。

それでは、あらすじの続きをどうぞ!

女の子の恰好で育てられる信乃

生まれてきた男の子は「信乃(しの)」と名づけられました。名前の由来ですが、これまで生まれた子は早死してしまったこともあり、古語で長いという意味の「しの」と名づけられたのです。他にも、番作と手束が夫婦になったのが信濃路であったことにあやかり、また、いつかこの子が出世して、信濃の守護になって欲しいという願いが込められました。

信乃は生まれてから女物の服を着て育てられました。当時は男の子を女の子のように育てると丈夫に育つと信じられていたのです。

そんなこんなで姫よ姫よと育てられた信乃ですが、本人は武芸にも興味を持ち、剣術や軍記を教えればあっという間に習得し、飼い犬の背にまたがって乗馬の真似事をするほど。この飼い犬は手束が拾ってきたあの犬で、名は与四郎と名づけられました。信乃は真っ直ぐな心根を持ち、両親想いの優しい少年へと育っていきました。

しかし、信乃が9歳の頃、母の手束が病に倒れてしまいます。手束いわく、自分の命に代えても信乃を護って欲しいと、日ごろから神に願掛けをしていたそう。そのため、信乃は前の子たちとは異なり健康に育っている。ここで私が死ねば、きっと念願が成就するだろう、と夫の番作に話しました。

それをこっそり聞いていた信乃は、祈祷のため滝に打たれに行ったのです。体は冷え、息も絶え絶えのところを村の人に助けてもらい、何とか命は取り留めました。信乃は「私が助かっては、母様の病気が治らなくなってしまう」と考え、命も惜しまず滝に打たれたのです。それを聞いて、手束は涙し、そして明るい気持ちで行くことができると感銘を受けました。

その10日後、手束は眠るように息を引き取ったのです。

父母想いの信乃とヒースクリフ

ここでまた一旦あらすじを中断して、まほやくとの関係をみてみましょう。賢者の魔法使い達は、キャラクターの性格もある程度モチーフから影響を受けています。ここまでの信乃のエピソードを読んで、個人的にはシノよりもヒースクリフっぽいなあと感じました。

ヒースクリフの両親は非常にヒースクリフを大切にしており、また、ヒースクリフも両親を大切に思っています。と、同時に、自分が魔法使いであるため、両親に迷惑をかけていると感じているのです。自分を卑下していると言ってもいいかもしれませんね。

八犬伝の信乃も、「自分が存在していると、母の病気が治らなくなってしまう」と、自分を卑下しています。また、このあと登場する信乃が授かる珠には「考」の字が浮かんでいます。これは儒教の「仁義礼智忠信考悌」の考えが元になっており、「考」は父母を大切にして、良く尽くすという意味があります。このあたりの考え方は、幼少の信乃とヒースクリフでよく似ているなあと感じますね。

そして、ヒースクリフのモチーフであろう伏姫しかり、嵐が丘のキャサリンしかり、両名とも女性です。しかも超絶美人。信乃は女物の恰好で育てられますから、ちょっと縁があると感じるような、そうでもないような。

ちなみに、父の番作は元々は由緒正しい武士の家系であり、本当は村長の立場であるべきなのですが、なんやかんやあって普通の村民として暮らしています。周りからの人望も厚い人格者なのです。

もしかしたら、幼少期の信乃の性格は、ヒースクリフにも少し受け継がれているのかもしれませんね。

それではあらすじの続きをどうぞ!

父の死と牡丹の痣

信乃が11歳の頃、飼い犬の与四郎が村長夫婦の飼い猫を噛み殺してしまった事件をきっかけに、父の番作があれよあれよと切腹へと追い込まれます。村長夫婦の狙いは、番作がかつて父から譲り受けた宝刀・村雨丸です。

村雨丸をよこすならば全てを許すと村長夫婦はいいますが、この刀は足利家伝家の宝刀であり、いずれ主君にお返しするようにと、番作は父から遺言を賜っていました。決して渡すわけにはいきません。

番作は信乃に言います。事を治めるために自分が切腹したら、信乃は孤児となり村長夫婦に引き取られるだろう。この村雨丸をそなたに譲る。そなたはこの一刀を守り続けよ、と。

信乃は「いやです」と番作の手にとりすがって止めますが、番作は信乃を押し戻し、ついには刀を腹にぐさりと突き立ててしまいました。血潮の下に泣く信乃。親子根性の別れに立って、番作の目にも流るる涙。番作の命は果ててしまったのです。

信乃は番作に後を追うなと止められていましたが、あの村長夫婦に引き取られるなど耐えられない。父と同じ村雨丸で後を追おうと決心しました。そこに、庭にいる飼い犬の与四郎の苦痛の長吠えが響きます。与四郎は村長夫婦に痛めつけられ、もう命は風前の灯だったのです。

「わしの死ぬ前に、おまえも楽にしてやるぞ。」

信乃のもとに、与四郎は知ったように首を差し出します。そしてひらめく刃のもとに、犬の首はころりと落ちました。と、与四郎の血潮の中に、きらめく1つの白玉が輝きました。これは手束が伏姫と八房に出会ったときに与えられた珠でした。

今更この珠を手に入れて何になるのか。その口惜しさに信乃が珠を投げ捨てると、なんと珠は信乃のもとに跳ね返り、左腕に当たりました。それから何度投げ捨てても、不思議と珠は戻ってきます。

ふと信乃が、先ほど珠が当たった左腕をみると、そこには牡丹の形をした痣ができていました。なんだこれは、と訝しげに見るも、信乃の決意は揺らがず、ついに腹を切ろうとしたその時。村長夫婦達が間一髪で止めに入りました。

信乃は抵抗しますが叶わず、そのまま村長夫婦に引き取られる事になったのです。

牡丹の痣

さて、ここでも一旦あらすじを中断して、まほやくとの関係を考えていきます。まずは信乃の左腕にできた牡丹の痣について。

この牡丹の痣は、今後ほかの八犬士にも現れます。この痣を頼りに、しだいに八犬士達が集合していくんですね。なぜ牡丹かというと、牡丹の匂いが獅子(八房)の力を抑える霊力があるから…と言われているのですが、このあたりはまだ詳しくは調べきれていないです。

そもそも、なぜ八房の力を抑える必要があるのかと言われると、玉梓(たまあずさ)という女性について語る必要があるのですが、話がだいぶ逸れるのでここは割愛。気になる方はご自身で調べてみてね。

さてさて、この体に痣が浮かび上がるというのは、まほやくでは賢者の紋章のモチーフになっていそうですね。賢者の紋章は牡丹ではなく黒い百合が浮かび上がります。なぜ黒い百合なのかについては、過去に聖母マリアの受胎告知に絡めて考察しているので、お時間があればそちらの記事も読んでみて下さい。

まほやく×聖書

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紋章の位置についてですが、シノの紋章は右肩、ヒースクリフの紋章は左腰の後ろに現れています。対して八犬士たちの痣の位置ですが、シノとヒースクリフの紋章の位置と同じ人はいません。信乃の紋章は左腕なので、シノやヒースクリフとは関係なさそうですね。

ではシノの紋章の位置は八犬伝とは関係ないのか?実はこの紋章のカギを握る重要人物がこの後のあらすじに登場するのです。名は「山林房八(やまばやしふさはち)」。後ほど考察するので覚えておいて下さいね。

宝剣・村雨丸

八犬伝で、信乃が父の番作から譲り受けた、足利家の宝剣・村雨丸。この村雨丸は物語において重要なキーアイテムとなります。

では、この村雨丸の特徴はシノの獲物に引き継がれているのか?と気になりますよね。調べてみましたが、あまりモチーフにはなっていないように感じます。村雨丸の特徴はこんな感じ。

  • つば元〜刀尖にかけて七星の文が刻まれている
  • 三尺(90cmくらい)の長さで、(たぶん)柄の部分が露結び
  • 霜がかかっていて、半輪の月とみまごうばかり
  • 抜くとつか元から水しぶきがあがる

シノの獲物である鎌とは、ちょっと共通点はなさそうに感じますね。おそらくシノの獲物が鎌になったのは、シノのモチーフとなった「嵐が丘」のヒースクリフが、さんざん悪魔悪魔と呼ばれていたので、そこからイメージされたのだと思われます。

シノ×嵐が丘

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では、村雨丸は今後まほやくには関係してこないのか?ここからは根拠のない盛大な想像になるのですが、お付き合いを。

本編中ストーリーでも、中央の国と西の国がバチバチしている事は取り上げられていますね。その影響で、東の国ももしかしたら中央の国と対立するのではないかとも言われています。

中央の国には宝剣・カレトヴルッフが存在します。これのモチーフとなったのは、アーサーのモチーフとなった「アーサー王伝説」に登場する魔法の剣・エクスリカバーです。エクスカリバーをウェールズ語で読むとカレトヴルッフとなるのです。

賢者の魔法使い達の中で、中央の国を象徴するアーサーの宝剣がカレドヴルッフだとすれば、東の国を象徴するヒースクリフの宝剣は何になるでしょう?

もしかしたら、村雨丸が東の国の宝剣としてモチーフになる事もあるかもしれませんね。だとしたら、個人的には胸熱…!今後の展開を楽しみにしましょう!ちなみにアーサーとヒースクリフの関係については下の記事でも触れているので、お時間があれば読んでみて下さいな。

オズ×シノ

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親友で義兄弟の犬川荘介

さて、ではあらすじに戻るとしましょう!

村雨丸を狙う村長夫婦に引き取られた信乃。そこで彼は運命的な出会いを果たします。それは、村長夫婦の元で使用人として働いていた額蔵という少年です。

信乃は当時11歳で、額蔵は12歳。信乃の行水を額蔵が世話しているとき、信乃の左腕の牡丹の痣をみて額蔵は驚きます。自分にも同じような痣があり、なおかつ同じような珠も持っていたためです。

信乃ははじめ額蔵を警戒していましたが、それを知り、痣ができた経緯、父母が亡くなっている話を打ち明けました。額蔵も自らが孤児となり、村長夫婦に引き取られた身の上を話し、ふたりは打ち解け合ったのです。

信乃は言います。「白玉の件なり、あざの件なり、これが縁無しと誰がいえるだろう。同じ薄命、同じ宿運、これで水魚の交わりをむすべることになった。つまり枯木再び春に逢うだろう。わしとて、こんな心強いことはない。」

額蔵も水魚の交わりとまで評してくれることに感銘を受け、天にものぼるここちです。額蔵は言います。

「ああうれしい。あなたは俊才のうえ、孝行で名高いので、もしもお近づきになれたら、千万人を知るよりどんなに益するかわからぬと思っていました。それが今かなったのですから、病雀が花をついばんで生気を取り戻したようなものです。今後、師としてつかえますから、なにとぞお導きください。」

自らを師にしたいという提案を信乃はやんわりと断り、逆に兄弟になろうと提案します。そしてふたりは水を酒に見立てて、義兄弟の契りを結びました。今後、どんな苦しみが待っていようと、死をもってともに引き受けよう、と。

額蔵は後に名を改め、自らを犬川荘介と名乗ることにしました。

シノとヒースクリフの約束

ここで一旦あらすじを中断して考察していきますね。ここで登場したのが、額蔵こと犬川荘介(いぬかわそうすけ)。作中で2番目に出てくる八犬士です。信乃が引き取られた村長夫婦のもとで働いている使用人ですね。

犬川荘介

写真提供:Inukawa Sōsuke – 南総里見八犬伝の登場人物 – Wikipedia

信乃は村長夫婦に養子のような形で引き取られているので、立場的には信乃の方が上でしょう。額蔵もへりくだった態度で信乃と接しますが、信乃は立場など関係なく、兄弟として接しようと諭しています。

この「義兄弟」という関係性は、なんだかシノとヒースクリフを思い出しますね。ヒースクリフとしてはシノの事を「弟みたいなもの」と話しています。対してシノはヒースクリフのことを主君と感じていますが、明確に関係性に名前をつけようとは思っていません。

このエピソードだけみると、立場は逆ですがこんな感じでモチーフにしているのかもしれませんね。

  • ヒースクリフ→犬塚信乃(主君)
  • シノ→犬川荘介(使用人)

この信乃と荘介の義兄弟の契りのエピソードからしばらくすると、荘介はなんやかんやあって濡れ衣を着せられて囚われてしまいます。それを信乃たち八犬士が救出するのですが、その時、信乃がこんなことを言います。

「それがしは子どもの時から生死をともにしようと誓った仲。たとえ助けられなくとも、ともに死ぬだけだ。」

義兄弟の契りを交わしたときに、信乃と荘介は、「死ぬときは一緒だ!」という約束をしているんですね。お互いに何かあったら助けに行くし、助けられなくても死を共にする、という約束です。

この約束から、何かを思い出しませんか?そう、シノとヒースクリフが交わした「必ずお互いを守る」という約束です。

約束を破ると、魔法使いは魔力を失ってしまいます。ただの人間になるのか、石になってしまうのが、そのあたりはまだ本編中で名言されていない気がするのですが、

  • お互いを守る
  • 守れなかったら(助けられなかったら)死を共にする

という点で、八犬伝の約束とまほやくの約束は類似していますね。もしかしたらシノとヒースクリフの約束は、信乃と荘介の義兄弟の契りをモチーフにしているのかもしれません。

桃園の誓いと誕生日カード

実は信乃と荘介の義兄弟の契りのエピソードにはモチーフがあると言われています。それが三国志の「桃園の誓い」です。劉備・関羽・張飛の3人が、桜の木の下で義兄弟の契りを交わす有名エピソードです。その時の台詞がこちら。

「我ら三人、生まれし日、時は違えども兄弟の契りを結びしからは、心を同じくして助け合い、困窮する者たちを救わん。同年同月同日に生まれることを得ずとも、同年同月同日に死せん事を願わん。」

そしてお酒をぐいっと飲んで誓いを立てたのです。信乃と荘介も誓いを交わすときに、お互いの生年月日を打ち明け、そしてお酒に見立てた水を飲んでいます。

写真提供:Peach garden ceremony – 桃園の誓い – Wikipedia

なおかつ、信乃がお互いを「水魚の交わり」と評しているのもポイントです。「水魚の交わり」とは、水と魚のように、切っても切れない親密な関係の例え。これも三国志で劉備が諸葛亮に告げた有名な台詞です。

八犬伝は三国志や水滸伝などからモチーフをちょいちょい取り入れていますが、これもそのひとつなのでしょう。

また、八犬士たちはこのエピソード以外でも義兄弟の契りを交わすのですが、信乃は犬飼現八(いぬかいげんぱち)という八犬士のひとりとも義兄弟の契りを交わしています。その時の文面がこちら。

ついに各々の玉を取りて、嚢に納め、えりに掛けて、もろともに跪き、天地を拝し、誓いを立てて、かの桃園の議を結びぬ。

こんな感じで作者の馬琴はバリバリに三国志を意識しながら八犬伝を書いていたんですね。この桃園の誓いですが、まほやくでもモチーフになっていそうです。それが2022年のシノの誕生日カードです。

桃の花の上で美味しそうに桃をほおばっていますね。2022年の誕生日カードには、モチーフとなった作品を意識してデザインされているカードもいくつか見られます。もしかしたら、このシノの誕生日カードも、八犬伝の義兄弟の契りを意識しているのかもしれませんね。

ところで、信乃が他のキャラクターとも義兄弟の契りを交わしている点について、もしかして荘介との絆はそんなに特別ではないの?と感じるかもしれませんが、信乃と荘介は特別強い絆で結ばれているように描かれています。

先ほどの信乃の「それがしは子どもの時から生死をともにしようと誓った仲。たとえ助けられなくとも、ともに死ぬだけだ。」という台詞しかり、荘介も「わしは犬塚信乃が無二の友、犬川荘介だ!」と名乗りをあげるシーンがあります。このふたりは本当に強い絆で結ばれているんですね。

信乃の影武者となった山林房八

では、あらすじに戻りましょう。このパートが今回の考察の目玉!山林房八(やまばやしふさはち)のお話になります。

時はとんで8年後。信乃は19歳の頃のお話です。信乃は村雨丸を主君に返そうと村を発ち、その道中で八犬士の達と出会っていきます。その八犬士のひとり、犬飼現八となんやかんやあって決闘をするのですが、途中で二人そろって屋根から転げ落ち、水際の小舟に落下してしまいました。そしてそのまま行方も知らず流されてしまいます。

信乃と現八

写真提供:Hōryūkaku – 南総里見八犬伝 – Wikipedia

それを助けたのが八犬士のひとり、犬田小文吾です。この時信乃と現八はお尋ね者となっており、小文吾は宿でふたりをかくまう事にしました。しかし、宿は人の出入りが多く、直ぐに発覚してしまう。それを案じてひとつ策を打ったのが、山林房八でした。

房八の祖父は昔、房八の嫁の叔父を誤って討っており、それをずっと負い目に感じていました。そして、犬田小文吾は嫁の兄。小文吾が困っているのならば、祖父の過ちを注ぐのは今と決心します。

見ると、信乃と自分はとてもよく似ています。自分の首を信乃として差し出せば、小文吾は罪に問われることはないだろうと考えたのです。

房八は宿に乗り込み、わざと小文吾に切られます。が、この時に過って自分の子どもを蹴り殺し、嫁も刺してしまいます。なんてこった。しかし、子どもはたまたま居合わせた法師によって助けられました。(この子は後に八犬士のひとり、犬江新兵衛と呼ばれます。)

この騒動のとき、ちょうど信乃は重い破傷風に伏せていました。この破傷風を治すには、若い男女の血を傷口に注ぐ必要があります。房八は言います。自分と嫁の血を信乃に与えよと。これで過ちにも面目が立つだろうと。

信乃は房八とその嫁の血によって、みるみると回復しました。しかし、房八はもう息も絶え絶えで、今にも命が消えそうです。信乃は房八と嫁の前で居住まいを正し、涙ながらにこう告げます。

「それがし、はからずもこの御夫婦のお恵みによって、難治の太刀痍は癒えました。だが御夫婦を生き返らす良薬がないのが、返す返すも恨めしゅうござる。それがし、難をのがれて志を得ることができ申したならば、この血染めの衣を後々にまで秘蔵して、厚い恩徳を子孫に伝えましょう。」

その言葉を房八は喜ばし気に聞いていました。絶えようとする最後の息を奮い起こし、自分の首を信乃の代わりに差し出すように言います。そして、法師によってわが子が助けられたのを見届けて、息を引き取ったのでした。

黒の単衣羽織とシノの服

さて、ではあらすじを中断して、考察に移ろうと思います。今回登場した山林房八は八犬士ではありませんが、それに劣らない義士として認められる勇士です。

信乃は房八が自らのために血を分けてくれた事、その首を代わりに差し出してくれたことに強い恩を感じていました。容姿も似ていて、かつ信乃の身代わりになった事もあり、読者からすると信乃の影武者のような印象を受けます。

房八の身なりで印象的なのが、黒い絽の単衣羽織です。絽とは着物の一種で、薄く透け感のある感じで織ってある夏の着物です。房八はこれを折りたたんで帯に挟んでいました。しかし、宿での騒動の折、この黒の衣も血に濡れてしまいます。

その衣を手に取り、信乃は「この血染めの衣を後々にまで秘蔵して、厚い恩徳を子孫に伝えましょう。」と約束しています。信乃にとって、恩人の大切な形見となったのです。その後、だいぶ先にはなりますが、大きな合戦の際に、信乃が房八の着物を身に着けている挿絵が描かれています。信乃は房八への恩をずっと忘れていなかったんですね。

シノの服装を見ると、黒を基調とし、羽織ではありませんがマントを身に着けています。八犬士が持っている珠をイメージしているのか、玉が胸元にあるのも印象的ですね。赤い紐は、房八が身に着けていた緋ちりめんの褌や朱緒の下駄からイメージしているのかも?前編でご紹介した八房という犬は白黒カラーなので、それも加味しているのかも。

シノの服装は、もしかしたら八犬伝からモチーフを得ているのかもしれませんね。といいつつ、実は信乃が房八から譲り受けた衣が、黒の絽だとは作中で名言されていません。「衣」とだけ表記されているので、黒の絽か、身に着けている麻衣のどちらかなのですが…。

信乃が房八に「この血染めの布を大切にします!」と伝えているということは、おそらく手に布を持っているのだろうとは思います。ということは、もし麻衣を信乃が手にしていた場合、房八はすっぽんぽんという事になってしまうわけで(笑)。たぶん信乃が譲り受けたのは黒の絽なんじゃないかなあどうかなあ。知見のある人がいれば、ぜひコメント下さい。

房八の傷とシノの紋章

房八は自ら小文吾に切られにいったわけですが、その時に房八は右肩をバッサリと切られています。この右肩で思い当たるのが、シノの紋章です。そう、シノの紋章は右肩にあるのです。

はじめ、シノやヒースクリフの紋章は八犬士の牡丹の痣の位置と関係があるのではと考えましたが、調べてみると位置は全く異なり、関係はありませんでした。しかし、クロエしかりシャイロックしかり、元のモチーフと関係が深い位置に紋章が現れているキャラクターもいるため、もしも八犬伝と関係があるのならば、と思いあたったのが房八の傷です。

房八は信乃と非常に顔や体格が似ており、かつ信乃の身代わりとなっています。そして右肩の傷が致命傷となり、命を落とします。もしかしたらこのエピソードをモチーフにして、シノの紋章の位置が決められたのかもしれませんね。

そういえばクロエの場合は、元のモチーフで死因となった蓮の花が咲いた場所に紋章が現れ、シャイロックは相手の心臓を抉ろうとしたら、胸に紋章が現れ…物騒なことこの上ないですね。いずれ紋章と元のモチーフとの関係もまとめたいところです。

信乃の破傷風と東の祝祭

房八のエピソードの〆として、最後にちょっとした小話を。信乃は作中で重い破傷風となり、命の危機に瀕していました。それを房八と、彼のお嫁さんの血で助けてもらったのです。

東の祝祭では、ヒースクリフが村の子どもに斧で切りつけられてしまいました。その際に斧が錆びていたため、感染症にならないかシノが心配している姿が描かれていました。破傷風は傷口から菌が入り、症状を引き起こします。錆びた釘を踏んだり、土のある場所で転んだりなど、原因は様々です。

東の祝祭で、あえて感染症について言及していたので、どうしてだろう?とは前から感じていたのですが、信乃が破傷風になったエピソードと関連付けて描かれたのかもしれませんね。

ちなみに、この時のヒースクリフは、房八よろしく方から胸にかけてバッサリ切られています。それでも助かったので、治療をしてくれたファウスト様さまですね。

石になった坊主と東の祝祭

最後に、ちょっとした小ネタを2つほどご紹介しますね。まずは石になった坊主について。というより、坊主になった石地蔵というべき?

信乃が古びた辻堂に入ると、そこには1体の石地蔵菩薩がありました。よくよく菩薩をみてみると、いつの日か悪僧が襲ってくると忠言してくれた老法師によく似ています。

聞いた話によると、実はこの石地蔵は、里見家の初代当主・里見義実の父が、結城合戦で討死した際に、その遺骨を埋めて墓表として建てられたのだそう。里見義実とは伏姫の父。この八犬伝の物語をはじめたと言ってもよい人物です。この辻堂は、その義実のお父さんのお墓だったんですね。

つまり、信乃に忠言してくれた老法師は、この石地蔵が不思議な力で動いて信乃を助けてくれた姿だったのです。

このエピソードを読んで、私はなんとなく東の祝祭を思い出しました。村にある教会には、石になった魔法使いが鎮座されていました。最初、石像のようだとも表現され、表情が生々しいとも描かれています。

信乃が見つけた石地蔵は、元々が地蔵で、それが人間として動き、最終的に石地蔵に戻ったので、厳密には東の祝祭の石になった魔法使いとはルーツが異なります。が、人が石になった姿はどことなく共通している気がしますね。

また、石地蔵があった場所は辻堂、つまりお寺です。東の祝祭では教会に石になった魔法使いがいましたね。仏像ないし神様ないし、信仰対象を祀る場所という意味でも似通っている気がします。

もしかしたら、こんなエピソードもモチーフになっているかも?と感じたお話でした。

犬阪毛野と機織りのバラッド

ではでは、ラストにご紹介するのが、八犬士のひとり、犬阪毛野についてです。毛野は幼いころに父を亡くしたため、母とともに女田楽の一座に入り育ちました。そのため女装で育てられ、舞や詩が得意なのです。あ、毛野は男性です。

この毛野の家紋ですが、三日月と星が組み合わさった、なんだか可愛い家紋なのです。

毛野の家紋

この家紋ですが、実はイベストの機織りのバラッドで、シノとヒースクリフの衣装にあしらわれています。シノはネックレスで、ヒースクリフは首元のアクセサリーですね。

この家紋のデザインは、他のキャラクターには用いられていなかったので、おそらく意図的にシノとヒースクリフにあしらわれたのでしょう。八犬士随一の美貌と舞の技にあやかって、衣装のモチーフになったのかもしれませんね。

さいごに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!いかがでしたか?

全てお読みいただいた方はなんとなく感じていると思われますが、信乃はシノのモチーフになっているというより、シノとヒースクリフの両方のモチーフになっていると言えそうですね。むしろヒースクリフに強く影響が及んでいるのかも。もしかしたら、

  • 嵐が丘のヒースクリフ→シノ
  • 八犬伝の信乃→ヒースクリフ

という感じで、逆のキャラクターが強くモチーフになっているのかも。とはいえ、八犬伝は時代が1400年代の武士ということもあり、口調は「それがし~である。」といった感じなので、信乃≒ヒースクリフと直観的には判断できないでしょう。

ただ、今回のようにエピソードをじっくり見ていくと、ヒースクリフを感じることができたのではないでしょうか?他にも信乃の領主としての才が輝くエピソードなどもあるので、気になる方はぜひ八犬伝を読んでみて下さいね。

ちなみに、信乃と房八のエピソード後の八犬伝の物語ですが、次第に八犬士達が集合し、最終的には里見家討伐を狙う大連合軍相手に合戦することになります。そして合戦に勝利し、物語は大団円を迎えます。

私は現代語訳で主に読み進めた事もあり、手に汗握るアクションシーンや、胸打つ情景を思い浮かべる語りなど、実にどきどきワクワクしながら物語を楽しみました。いやー、ほんとアクションシーンとかカッコイイんですよ。現代語訳だとスルスルと読めますが、原文訳だとちょっと読むのは大変かも。図説本もあると更に心強い。

今回はまほやくの考察ということで、関係が深いエピソードをピックアップしましたが、まだまだ八犬伝を代表する有名エピソードが目白押しです。八犬伝のテーマは勧善懲悪。悪党が必ず裁かれるので、スカッとした心持で読めるでしょう!レッツ八犬伝☆

それでは、また別の考察でお会いしましょう!

See You!

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参考文献

現代語訳 南総里見八犬伝 上 :曲亭 馬琴,白井 喬二|河出書房新社

「南総里見八犬伝 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」 曲亭 馬琴[角川ソフィア文庫] – KADOKAWA

図解 里見八犬伝 – Shinkigensha Web

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