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シャイロックの根幹をつくった不朽の名作!ヴェニスの商人を読み解く!

はじめに

スマホゲーム「魔法使いの約束」に登場する賢者の魔法使いたちは、有名文学をモチーフとして形作られています。今回は優雅で独自のの美意識をもつ西の魔法使い、シャイロックについて考察していきます。

シャイロックの原案となるのは、シェイクスピア作「ヴェニスの商人」に登場する悪役・シャイロック。「人肉裁判で主人公の心臓の肉1ポンドを切り取ろうとする人」と表現すれば、ピンとくる人もいるでしょうか。果たして「ヴェニスの商人」からまほやくどういった影響を受けているのか、じっくり考察していきたいと思います。

多少のネタバレが含まれる場合がありますので、原作未プレイのかたはご注意下さい。

それでは、レッツゴー♪

「ヴェニスの商人」概要

概要

011-Escena de prueba-Shakespeare’s comedy of the Merchant … | Flickr

「ヴェニスの商人」はウィリアム・シェイクスピアによって作られた喜劇です。劇ですので、舞台で役者たちが演じ、物語が披露されます。なので、文学作品が先に立つのではなく、舞台を本として残したものが文学作品として後世に残っている形になります。

初演時期ははっきりと断定はできませんが、1596・7年ごろと言われています。その優れた物語性から人気を博し、これまで何度も様々な役者達によって公演されてきました。日本では市川猿之助さんがシャイロックを、中村倫也さんが女性のポーシャ役を好演し話題になりました。特にシャイロックは物語のキーマンですので、名だたる名優が演じる事が多いです。それだけ人々の心に深く刺さるキャラクターなんですね。

シェイクスピアについて

Shakespeare | The Bard perched atop the large statue in Stra… | Flickr

シェイクスピアは1564年にイングランド・ストラトフォードに生まれ、20歳頃にロンドンへ出郷。以降、役者、後に座付き作者として活躍します。生涯で約37編の史劇・悲劇・喜劇を創作。詩作にも秀で、ルネサンス文学の巨星と称されます。

「ロミオとジュリエット」「ハムレット」「マクベス」など、非常に多くの有名作品を生み出していますが、この「ヴェニスの商人」が執筆されたあたりから、作品の質、形式ともに劇的に深みが増し、後に四大悲劇と称される作品が生まれてゆきます。喜劇はだんだんと少なく、しかし表現方法は豊かになり、シェイクスピア独自の「浪漫喜劇」と呼ばれるジャンルが確立していきます。

シェイクスピアのお墓には、実は未発表の作品が一緒に埋葬されていると噂されているのですが、真実を知るものは誰もいません。

あらすじ

イタリアのヴェニス(ヴェネツィア)にて。主人公のアントーニオは、友人バサーニオーのために、悪名高い高利貸しのシャイロックに金を借りにいきます。バサーニオーは富豪の娘ポーシャに一目ぼれし、結婚を申し込みに行く支度金を用意したいものの、そんな資金がなかったのです。

しかし、シャイロックはユダヤ人であるが故、日頃からアントーニオに悪口などを言われており、シャイロックはアントーニオのことを快く思っていませんでした。もしできるなら、アントーニオに仕返しをしてやりたいと思い、シャイロックはひとつ提案をします。

「指定された日付までに借りた金を返すことが出来なければ、シャイロックにアントーニオの肉1ポンドを与えなければいけない。」

アントーニオは貿易商人。ちょうど彼の所有する船が航海中で、もうすぐまとまった金が手に入る予定でした。そのため、アントーニオはシャイロックのいう通り証文を交わしてしまいます。つまり、「約束」をした、ということです。

しかし、約束の期日前。アントーニオの船が難破し、彼は全財産を失ってしまいます。金を返す事ができないため、アントーニオは裁判にかけられました。アントーニオへの憎しみに囚われたシャイロックは、アントーニオの友人が金を返すと言っても、断固として彼の心臓の肉1ポンドを要求します。アントーニオが殺されてしまう。そう誰もが思ったとき、裁判官がこう言いました。

「憎い男の肉を切り取るがよい。ただし、その際に、証文にないキリスト教徒(アントーニオ)の血を一滴でも垂らしてはならぬ。」

これにより、アントーニオは無事生還し、逆にシャイロックはアントーニオを命の危険にさらした罪として自身の財産を半分無くし、ユダヤ教からキリスト教へと改宗させられました。そして実はアントーニオの船が難破していないことが判明。アントーニオの友人も意中の人と結婚することができ、物語は大団円を迎えました。

時代背景

009-Shylock Antonio Salarino y Gaoler-Shakespeare’s comedy… | Flickr

この1600年代の時代背景として、ユダヤ人の迫害があげられます。劇中では度々、シャイロックのことを「ユダヤ人」と侮蔑し、アントーニオのことを「キリスト教徒」として高く置いた表現がされています。この頃、ユダヤ人は排斥されていたため、まともな仕事につくことができませんでした。しかし、キリスト教徒にとって金貸しは卑しい仕事とされていたため、多くのユダヤ人が金貸しとして働いていたのです。

アントーニオをはじめとした登場人物が、軒並みユダヤ人を迫害するような発言をしますが、当時は至極当然であり、罪ではないとされています。ただ、シャイロックも負けじと罵詈雑言を相手に返していますが。

また、物語の最後でシャイロックはキリスト教に改宗させられました。宗教はその人の生き方そのものであり、ましてやユダヤ教とキリスト教は色々な事情があり、互いに反発しあっている状態。無理に改宗させられる事は、非常に屈辱的な事なのです。ちなみに、改宗を命じられる前には、シャイロックの命を捕るか、全財産を没収するか、という案が出ていました。シャイロックはどちらも同じこと。さっさと自分を殺すように、と半ばやけくそ状態で言い放ちます。

けれど、アントーニオの「慈悲」により、財産半分の差し押さえ+改宗という案が提示されました。シャイロックは反論せず「それでよろしゅうございます」と答えます。シャイロックからしたら、きちんと契約したにも関わらず、なぜか自分が損をした状態。しかし反論しようにも回りはみんな敵だらけ。だれもシャイロックの、ユダヤ人の話を聞こうとはしないのです。そのため、シャイロックは条件を全てのみ、疲れたように法廷を後にしました。

余談

ここまで読むと、シャイロックが哀れに感じますが、当時は全く意図せず、ただ単に「叩きやすい純粋な悪役」として描かれていたと考えられます。それだけユダヤ人は低く見られるのは当たり前でしたし、非常に叩きやすい存在でした。また、この「ヴェニスの商人」はあくまで喜劇です。喜劇とは人を笑わせることを主体とした物語であり、今回でいえば「悪役が成敗され、主人公達はハッピーエンド!めでたしめでたし!」というお話です。

しかし、現代になってシャイロックが哀れであるという見方が目立ち、シャイロックを主人公にした舞台も公演される程。それほどまでに魅力的なキャラクターであるからこそ、まほやくでもメインキャラクターとしてオマージュされたのでしょう。確かに「ヴェニスの商人」のシャイロックは罵詈雑言を浴びせられて可哀そうですが、お返しとばかりにシャイロックも厭味ったらしく罵詈雑言を返しています。負けず嫌いなところはまほやくのシャイロックとよく似ていますね。

機会があれば、文庫本を読むか、舞台を観て下さい。400年たった現代でも、とても楽しめる物語です。

二人のシャイロックの成り立ちと共通点

出身地

まほやくシャイロックは西の国の港町、ベネットに生まれました。ベネットはシャイロックいわく、「丘の上には葡萄畑が広がっていて、丘から見下ろすと、紺碧の海岸が輝いている。」という特徴があります。

シャイロック14

これは「ヴェニスの商人」の舞台となった、港町ヴェネツィアと、架空都市ベルモントを併せた特徴となっています。ヴェネツィアは、言わずと知れたイタリアにある水の都です。水路・運河が街中のいたるところを流れ、主な交通手段は水上バスという、なんともハイカラな街です。

そして、ベルモントとは、「ヴェニスの商人」の作中に登場する架空の都市。ベルモントの特徴については、作中でもあまり触れられていませんが、ベルモントは「美しい丘」という意味です。おそらく「ヴェニスの商人」においても、緑が美しい丘が広がっていたことでしょう。

葡萄畑については、作中でも登場していません。しかし、わずかながら葡萄について触れられているシーンがあります。それは、シャイロックがアントーニオの友人からこう罵倒されているシーンです。「お前さんと、(シャイロックの)娘さんとでは血の色が大きく違う。赤葡萄酒と白葡萄酒、それ以上さ。」

これはキリストが「パンは我が肉、ワインは我が血」という言葉を残したため、ワインに宗教的な意味合いが込められたことにより、なぞらえて発せられたセリフです。アントーニオ達をはじめ、シャイロックを除く作中の殆どの登場人物がキリスト教徒のため、自然とその比喩が出たのでしょう。シャイロックの娘は、父とは違いアントーニオの友人達から好意を向けられていたため、「娘と違ってお前は悪魔だから、人間の血の色をしていないな!」と悪口を言われたのです。

ちなみに、現代におけるヴェネツィアがあるヴェネト州は、ワインの名産地で、国際ワイン見本市「ヴィニタリー」が毎年開かれています。場所は、同じくシェイクスピア作「ロミオとジュリエット」の舞台となったヴェローナ都市。なんだか縁を感じますね。

なんとなくですが、まほやくのシャイロックのイラストなどを見返すと、ワインが登場するときは赤ワインが多い気がします。もしかしたらこのあたりのエピソードも意識されて、酒場の店主という設定にになったのかもしれませんね。

共通点

「ヴェニスの商人」におけるシャイロックは、傲慢な金貸し、周囲から酷く嫌われている存在です。発言も他者を傷つけるものばかりで、まほやくシャイロックとは一見共通点がないように感じます。しかし、人間性の根っこの部分はとても似通ったところがあり、しっかりと原案の魂を受け継いでいるのです。

等価交換の精神

「ヴェニスの商人」では、シャイロックは欲深い高利貸しとされていますが、その実、お金を貸す代わりに利子をとる、という、借入者と50/50の契約を結んでいます。(利率が正当かは原作に描かれていないのでわかりかねますが…)

しかし、主人公のアントーニオは、お金の貸し借りに利子などはとらず、そのまま貸したり、借りています。また、シャイロックをはじめとしたユダヤ人の取引に口を出し、利子を下げるように働きかけていました。つまり、アントーニオの行為は「慈善」であると同時に、何の代償も発生していないのです。ここで、まほやくシャイロックのセリフを見てみましょう。

「痛みを伴わない快楽には、歯止めが効きませんよ。」

シャイロック15

「ヴェニスの商人」作中でも、アントーニオは人肉裁判に逆転勝利し、何の代償も払わぬまま無罪放免となりました。また、シャイロック以外の登場人物は、ほとんどハッピーエンドを迎え、そのための金などの代償はシャイロック一人が払っています。

このセリフは、「ヴェニスの商人」シャイロックの影響を受けた忠告ともみれるでしょう。どちらのシャイロックも、利益を得るためには代償が必要だと考えており、現代の考えに近いリアリストだということが伺えます。

憎しみの感情を受け入れている

「ヴェニスの商人」で最も有名なシーン、人肉裁判。そこで二人のシャイロックの根幹を形作るキャラクター像が垣間見えます。アントーニオの心臓の肉1ポンドを切り取ろうとするシャイロックに、アントーニオの友人がこう問いかけます。

「気に食わぬ、だから殺してしまう。それでも人間か?」

それにシャイロックはこう答えます。

「憎い、だから殺したくなる、人間ならだれしもそうだろうが?」

シャイロックは長年アントーニオに嫌がらせを受け、憎悪はつもりに積もっていたため、たとえ借りた金を何倍にして返すと言われても、仕返しをすることにこだわっていました。

アントーニオを憎む感情、いわゆる汚い感情は、人間なら誰でも持っているものであり、それをありのまま受け入れているのです。ここで、まほやくシャイロックのセリフを見てみましょう。

「汚い感情が恥ずかしいですか?…おかしなことです。それは当たり前にあるものだ。」

シャイロック16

まほやくシャイロックも、人間の汚い感情を受け入れています。シャイロックにはムルという友人がいますが、友人であると同時に憎しみもいだいている存在。その心を否定することなく、憎いものは憎いと認めたうえで、ムルと関係を続けています。汚い感情を拒むことなく受け入れている二人。この人間臭いところも「ヴェニスの商人」から影響を受けているのでしょう。

ユダヤ人と魔法使い

「ヴェニスの商人」ではユダヤ人は酷く迫害されています。基本的にヴェニスに住んでいる人々はキリスト教徒であり、シャイロックはその中で数少ないユダヤ人、つまりユダヤ教徒でした。ユダヤ人は「キリストを裏切ったユダ」として、当時はキリスト教徒からひどく嫌われていました。(ちなみにキリストもユダもユダヤ人なんですけど、そのあたり深く知りたい人はGoogle先生にきいてみて下さいね。)

旧約聖書について考察した記事があるので、お時間があればこちらも読んでみて下さいね。

カイン×旧約聖書

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当然、シャイロックも周りから心無い言葉をかけられますが、本人はユダヤ人であることをひとつも恥じていません。1言われたら10を言い返し、決して折れない。本人からしたら、何の罪があってあれこれ言われなければならないんだ、という心持ちです。

これは、まほやくにおける魔法使いの立場や、もう一人のシャイロックの心情とよく似ています。まほやくで魔法使いは「嘘をつく。信用できない。」と人間から嫌われており、迫害の対象となっています。地方によってその差はありますが、シャイロック達の出身地、西の国ではあからさまに魔法使いを毛嫌いしている人が多い地方です。

しかし、そういった土地柄でもシャイロックは魔法使いであることを恥じたりはしていません。自身の立場を受け入れ、人生を楽しんでいます。とはいえ、酒場は基本的に魔法使いのみ入れる会員制バーのような仕組み。「ヴェニスの商人」のシャイロックもキリスト教徒とは仲良くせず、同じユダヤ人とは良い関係を築いていたので、仲間内で楽しめればそれでいい、という気風もどことなく似ているのかもしれません。

ユダヤ人とキリスト教徒。魔法使いと人間。

どちらも元は同じ「人」であるにも関わらず、出自によって立場が変わってしまうというのは、なかなか難しい問題ではありますね。

シャイロックの傷と心臓

まほやくのシャイロックは大いなる厄災との戦いで受けた傷により、不定期に心臓が燃えるようになってしまいました。痛そう。これは「ヴェニスの商人」のシャイロックが、主人公アントーニオの心臓の肉1ポンドを切り取ろうとしたエピソードが元になっています。

シャイロックの他にも、厄災の傷を負った魔法使いがいます。そのキャラクター達も、自身の原案と関連が深いエピソードが傷として現れています。では、なぜそれが傷として現れたのか。単に関連が深い内容がキャッチーであるから公式が設定した、と言ってしまえばそれまでですが、何か法則性があると面白いですよね。そのあたりはこれからも鋭意考察していきたいと思います。

シャイロック02

さいごに

ここまでお読みいただき、いかがでしたでしょうか?

「ヴェニスの商人」のシャイロックという人物は、悪役ながらも、その人間性に共感や哀れみを感じる人が続出し、「ヴェニスの商人」きっての大人気キャラクターとなりました。この記事をお読みいただき、あらすじを知った今でも、とても楽しめる作品ですので、ぜひ機会があれば観劇や読書をおすすめします。特に人肉裁判のエピソードは、まほやくの西の祝祭ストーリーと密接に関わってきますので、どちらを先に読んでも楽しめると思います。

この記事以外にも、シャイロックや「ヴェニスの商人」について考察していますので、そちらもぜひ!

ここまでおつきあいいただき、ありがとうございました。

それでは、また!

参考文献

ヴェニスの商人 – Google Books

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